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2000年代同人サイトの思い出

ネット歴史

あの頃(2000年代前半)はサイト全盛期であった。

何のサイト全盛期かっていわゆる同人サイトだ。同人サイトというのは、漫画やアニメのファンがファンアートの展示や同人誌の通販を行うためにつくった個人制作のホームページのことだ。

今はファンアート発表の場をpixiv、twitterに奪われているけれど、当時は「書いた小説や漫画を同好の士に発表する」といったら1も2もなくホームページだった。もちろんファンロードとかコミックテクノへの投稿もあるけれどあれはイラストで選ばれし民だけが掲載を許されるものだ。誰でもとにかく発信したいとなったらホームページだった。

2000年に入ったころはyahoo!ジオシティーズのでっかい広告バナーが目立つ無料レンタルスペースに、ホームページビルダー或いはワードで作成された背景固定もされていないこともままある「◯◯(※HNが入る)のホームページ」が多数形成されていた。月ごとに変わる好きなキャラのトップ画像、日記の熱い萌え語り((爆)(照)(殴)←ヲイ)、管理人の◯◯さんと直接話せる掲示板お絵描きチャット(マウスで描く)など魅力的なコンテンツが多数でジオシティーの巨大広告も気にならなかった。

しかし、その後無料「fc2」「忍者ツールズ」と1行広告のみのスタイリッシュなレンタルスペースが登場した時は恐れおののいたものだった。これまではフレーム型のサイトをみようとすると広告が邪魔で邪魔で仕方がないという現象に悩んでいたが、このたった一行の広告はその悩みを解決してくれた。

魅力的なレンタルサーバーの爆誕により同人サイトはさらにドンドコドンドコ増えていった。サイトをつなぐためウェブリングは増えまくり(ランダムジャンプ)、サーチも増え、カウンターは「ようこそ…あなたは◯◯人目の旅人…」と訪問者を歓迎し、「何十万ヒット御礼!」とキリ番・キリリク文化が生まれ、ダミーエンターが生まれ、漫画のキャラが会話形式でネットマナーを語るページがドコドコ生まれ、さらにはオタ女子達は隠しページ発掘のため黒背景反転・tabキー連打という術を誰から学ぶでもなく、身につけていた。ちょっと気の利いたオタ女子はcgiを自分で弄り、小洒落た通販ページや掲示板、日記ページを作ることもできた。

やがて中学◯年になった私はみるだけでは飽き足らず、自分でもウェブサイトをつくることにした。htmlもよくわからなかったがとほほで勉強し、「html配布サイト」からコピーしまくりメモ帳に貼り付けて作成していた。

その当時、同人ホームページ界には新たなブームが沸き起こっていた……「お題サイト」である。お題サイトとは、「創作のインスピレーションをわかす言葉を並べた」サイトのことだ。例えば「鋼の◯金術師に5のお題」だったら「1、赤 2、禁忌…」などである。さらにポエミックに「ひみつのあのこに10のおだい」とひらがながやけに多く「あのこの 齧った、紅い、花/you’re my only shinin’ star…」と何をどうすりゃいいんだという具合の抽象的なお題をならべたサイトも流行した。私も「50個くらいお題を達成すれば自動的にコンテンツが充実するぞ」とそのポエミックなお題サイトを活用することにした。4つくらいで挫折した。代わりに他のサイトと相互リンクするための交流に熱を注いでいた。

ネットにつなげる携帯電話は高校生まで持っていなかったが、同時期に「まほうのiランド」他携帯サイトもおそらくはやっていた。一昔前の、黒背景にキラキラした素材を駆使したサイトからうってかわって主流であったのが、白背景パステルカラーの、日記をmurmur、ウェブ拍手を!、リンクをbyebyeとごく薄い色で表記するいわゆるおしゃれサイトである。展示されている小説はなぜかタイトルが超巨大な字でかかれ、最後に謎の一文が挿入されるスタイルであった。

おしゃれサイトの波はpcの個人ページにも訪れイラスト内にリンクを貼る・ツボ小説と呼ばれる文字をセンター揃えにした小説群・テンション高い萌え語りではなく小洒落た写メ日記が管理人の名前の隣にぽつんとあるみたいなスタイルへと変貌していった。「htmlテンプレート配布」サイトも栄華を極め、大量にある素材サイトから素敵な素材をピックアップしてつくったオリジナルhtmlテンプレートを無償でバンバン配布しまくり、大した知識がなくても文字を変えるだけでおしゃれなサイトができるようになった。

しかし2008年〜09年頃から、イラストサイトの管理人のプロフィール周辺に「ピクシブ」へのリンクが貼られるようになった。最初は何だこれは?状態で特に気にも止めていなかったが、だんだんサイトの更新がなくなりだし、ブログに「ピクシブにいます!」と書かれ出し、こわごわとイラストSNS・ピクシブに登録してみれば右向けど左むけどありとあらゆるジャンルのイラストが並びまくっていた。しかも点数でイラストを評価し、ブックマークで己の好きなイラストをならべてコレクションまでできる。ピクシブアカウント一つでこれまでせっせと通っていたサイトたちの必修課題・ダミーエンターをくぐり抜け細かいイラストのサムネから最新の更新を探し出し、「あの絵見たかったけどどこだったっけ」と己のブクマをひっくり返す必要がなくなったのである。

やがてピクシブに小説が投稿できるようになり、気づいたら投稿していた。その時流行りのジャンルだと何百とブクマがつくので承認欲求が満たされた。それまでは毎日更新して100人見てくれるかどうか、それでいてそのうち何人がウェブ拍手をくれるかどうかという具合だった。ピクシブは違う。何百、何千という人が閲覧してくれて、点数をボンボン入れてくれてと貰える数の桁が違う。しかしだんだん投稿する時のワクワク感は「次投稿する作品は前よりも点数が貰えるだろうか…」という数値への期待に変わってしまっていた。

しばらくして、数年前にアニメも原作も終わったマイナーなジャンルにはまりだした途端、ぴたと貰える閲覧数も評価もブクマもなくなった。投稿作品を調べれどピクシブ内に書いている人間が見当たらない。その時はじめてそれまで「新しい作品にハマったらサーチを探す」ではなく「ピクシブでキャラ名を検索する」と変化している己に気がついた。サーチは見つかったがとうに朽ち果て、更新年月は数年前であった。その中に残っているサイトを訪問する。このサイトは90日間更新されていませんーーとfc2の真四角な広告をくぐり抜け、アカウント切れになったブログに落胆し、しかし「garrelly」(往々にして綴りが間違っている)をクリックする。ハラショー、我発見せり…求めていたイラストはここにあったのだ…「リンク」に飛び、「×」の表示された直リンクバナーをクリックする。404forbidden 404forbidden あっここはまだ遺構がのこっているぞ…ハラショーー!(以下繰り返し)

管理人に届くかわからないウェブ拍手を連打し、私の求めているものはここにあったのだーーーと懐かしさいっぱいでかつてのサイトを噛み締めながらふと気になって、自分が中学生の頃につくったサイトは残っているだろうかと検索した。…残っていた。思っていたよりも痛い。サイトの色も目に優しくないし中身が心に痛い。中間テストのこととか書いてる。受験のこととか書いてる。すまない、こんな大人になってしまったーーそして、当時好きだったキャラはもう10近く年下なんだ……。消したい。猛烈に消したいがパスワードもわからない。このまま私の黒歴史はウェブ空間を漂い続けるのだろうか…

アカウント一つで黒歴史をなかったことにしてくれるピクシブは、そういう意味では優しいかもしれない。ボタン一つで、なかったことになったらいいのに。 おしまい



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