環境犯罪学上の理論である「割れ窓理論(ブロークンウインドウ理論)」。この考え方はビジネス上でも活用されており、かのスティーブ・ジョブズもアップル社に復帰した際に取り入れたとされています。昨今「机が汚いほうがクリエイティブだ」という意見もチラホラ見ますが、再考する余地があるかもしれませんね。
ブロークンウインドウ理論とも呼ばれる。
アメリカの犯罪学者ジェームズ・ウィルソンとジョージ・ケリングが発案した理論
建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、やがて他の窓もまもなく全て壊される-という考え
割れた窓を見た人が、「この場所は防犯に配慮していない」と感じ、犯罪を起こしても大丈夫ではないかと考えることから、犯罪の発生件数が増える
◆「割れ窓理論」を活用したニューヨークの例
治安対策として、まずは地下鉄の落書きをひとつずつ消していった。
ニューヨークの地下鉄公団は地下鉄の落書き清掃作戦に取り組み、地下鉄警察は地下鉄内で頻繁に起こる重罪事件への対処として無賃乗車の撲滅に取り組んだ
地下鉄に描かれたらく書きを徹底的に消すことで、地下鉄内での他の犯罪が減少した
その後、ニューヨークの市長となったジュリアーニ氏はこの「割れ窓理論」を元に、徹底的に街の落書きなど軽微な犯罪を取り締まった結果、凶悪犯罪の件数をも激減させた
1990年代の初めと終わりとでは、重罪事件の発生は75%も減った。
ニューヨーク市元市長(在任期間は1994年から2001年)。凶悪犯罪撲滅および市の治安改善に大きな成果を挙げたと言われている。
◆実はビジネスにも活用されている「割れ窓理論」
《ディズニーランド・ディズニーシー》
ディズニーランドやディズニーシーでは、パーク内のささいな傷をおろそかにせず、ペンキの塗りなおしや破損箇所の修繕を見つけ次第頻繁に行うことで、従業員だけでなく、来客のマナーも向上させることに成功している
《ノードストローム》
アメリカのデパートチェーン、ノードストロームでは、単に傷を治しておくという消極的対策だけでなく、「割れ窓」の対極である意味合いのピアノの生演奏を顧客に提供するなどして、成果につなげている
《日本電産・永守重信社長》
「儲かっていない会社にはいくつか共通点があるのです。一つは社員の士気が落ちています。会社の士気が落ちていると当然工場は汚いですよ。事務所も汚い。電話の応対がいいかげん。マナーがなっていない。つまり6Sができていないのです」
出典人間力.com
※6S=整理、整頓、清潔、清掃、作法、躾の六つのSのこと。
◆スティーブ・ジョブズも「割れ窓理論」を利用していた
「割れ窓理論」を元に社内改革を行ったとされている。
その頃のアップル社内というのは「学級崩壊」ならぬ「社内崩壊」とでも言うのか…優秀な人は山ほどいましたが、全員が自分の向きたいほうを向いて好きな事をやっているような感じでした
スティーブ・ジョブズがアップルに戻ってきて、まず対処したことはダレた社風を一新することだった。彼が復活する前の社内は遅刻が常態化し、ペットを持ち込み犬と遊んでいる社員までいたという
スティーブ・ジョブズがアップルに戻ってきて行った仕事。それは、働く”環境”を徹底的に変えたことである
※ペットの持ち込みを禁止するなど、まずは社内の意識改革から行ったという。
◆職場の”割れ窓”は放置すべきではない!?
職場でも、挨拶、時間、期限、小さな嘘など、社会人として基本的なことを見逃していると、それが割れ窓になってしまう可能性がある
例えば、汚い作業環境では「これでいいや」と仕事の完成度に甘さがあっても許容してしまう空気が出てくるだろうし、果ては不正なども発生するかもしれない
ある大手ベンチャー企業が老舗の出版事業を買収した際には、徹底して時間管理と机の片付けを命じたという話もある
◆職場で簡単にできる「割れ窓理論」の応用
なんでもないような当たり前のことを徹底的に行うこと-それが”割れ窓”を防ぐ手段となる。
・あいさつをきちんとする
・デスクや書類など作業環境を整理する
・社内の掃除を徹底する
・時間や期限を厳守する
・報告/連絡/相談(ホウレンソウ)を徹底する
◆というわけで
「割れ窓理論」を応用させてみては?