外来種の何が問題か?(世界的な種の均一化とは?)

歴史

以前書いたエントリで、説明しようと思ったんだけど話が長くなりそうだったので端折っていた所です。(どっかのQ&Aに私が書いたものですが、それを焼き直しています。)過去のエントリを読むと、あまりに何も書いてなかったもので、ここにあげて置きます

(1)外来種が移入することの問題点

ある地域で、様々な生物が生息している状態(=在来種のみで構成されている状態)は、数百年~数万年かけてその状態に至った結果で、生態系としては比較的安定しています。

外来種が、新しい土地で生き残り、定着したかどうかを長期的に調査すると、定着できていない事や、定着していても、移入当初の勢いのまま増殖している訳ではない事がけっこうあります。たとえば、外来種がその土地で捕食できる生物をすべて食べつくし、数十年後に絶滅すれば、結果的に生き残ったことになりません。外来種が生き残れた場合でも、侵入当初急速に増えても最終的には頭打ちあるいは減少に転じ、多くはそこで安定して生き残るのに適した個体数に落ち着くと予想されます。

しかし、一旦外来種が増えれば(特に侵略的外来種であれば)、その時点ですでに周辺の在来種の多くに深刻な影響を与えてしまいます。

ある(侵略的)外来種に入り込まれた土地の生物集団に目を向けてみます。その在来種の集団は、外来種に自分達の餌となる種を捕食されたり、住処を収奪されたりします。その結果、安定していた生態系は容易にバランスを崩します。同じような食性や住処を必要とする在来種(競合している種)が絶滅する場合もあります。餌となった種が絶滅したり、壊滅的状況に至る事もあります。
競合や捕食などで外来種の影響を受けた在来種の個体数回復は、困難で長期を要します、というか戻らないことが多々あります。

たとえ外来種の大増殖する時期が短期間で終わったとしても、在来種にとって繁殖等に深刻な影響を受けてしまっている場合もあります。

植物の場合、種をつけるのが年に一度というタイプがよくあります。
例えば、最初の1年間だけ外来種が大暴れして増えすぎ、徐々に減少して落ち着いたとします。
ある在来種にとって、うまく繁殖できなかったのがその1年限りだとしても、翌年はその在来種は激減し、多くの場合それ以降も回復が非常に困難になります。
なぜかというと、一度激減すれば種をつける親がそもそも少ない状態になる上、単純に前年繁殖に失敗して減少した状態ならば相対的に豊富になるはずの生息域や日照などが、外来種によって先に占有されている状態になるからです。
(難しい話ですが、更に悪い事にこれが起こると種内の「遺伝的多様性」も低下します。この話もしたいのですが、長くなるので割愛します。)

元の生態系が好きとか嫌いとかいう問題ではなく、長年かけてその土地、気候に適した状態まで進化した生物群が生息していたものを、外来種は容易に破壊し、わるければ共倒れするので、厄介だということなのです。

(2)世界的な種の均一化
「生物多様性」自体の解説は、基本的な話なので割愛します。
生物多様性により、ある種が環境変異などで壊滅的な減少、あるいは絶滅を起こしても他の生物種(バックアップ種など)が各々働いて、クッションのような役割を果たします。結果的に、その生態系は一部の生物種が壊滅的な減少、あるいは絶滅しても、安定してそこにあることになります。

生物多様性が高まると生態系の安定性が高まるとされるのは、そのためです。
(今まで人間が多少の無茶をしても十分快適な環境で生息出来たのは、このおかげかと思われます。)

ですが現在、人間の力によって、意図的に、あるいは意図せずとも、飛行機や船などの移動手段によって世界中の生物があちこちに移動しています。これにより、世界的な「種の均一化」という現象が起きています。
世界各地で多様な生物種の構成だったはずが、世界中どこでも似たような構成に変わってきてしまったのです。

これは危険な状況です。一部地域だけで見れば一見生物多様性が高まったかのように見えますが、世界的に見れば多様性は低くなっているのです。
世界各地の環境に適応しやすい「強い」外来種が侵入してきたことで、在来種は減少したり、絶滅したりしています。代わりにその外来種が定着しつつある場合もあります。

さて、これがなぜ危険なのか、どのような影響を与えるかという事を説明します。
たとえば、世界中で増殖中の「強い」外来種に対して、もし、致死的な病気が発生すれば、どうなるでしょう?
世界中でその種が死滅すれば、その種に依存して増殖してきた生物もあおりを受けて減少あるいは絶滅します。すでに外来種の侵入によって撹乱された生態系に、さらに追い討ちをかけるように、広い範囲で生物の絶滅あるいは減少が起こると予想されます。

もし、種の均一化が世界中に広まっていなければ、言い換えれば世界各地でそれぞれの多様な生物種の構成が残されていれば、たとえある外来種が侵入し、生態系に影響を与え、その後絶滅しても、1種程度の侵入であればおそらく(長い時間をかければ)ほとんどの生物多様性は回復していきます。多くの生物種がいる環境下では、絶滅した種に替わって別の種が代役を果たし、条件がそろえば絶滅した種の代わりに増殖するので、他の生物種にそれほどの影響を与えずに終わるはずなのです。

種の均一化は、1種だけの侵入ではなく、世界各地の環境に適応しやすい複数の種が侵入し、全体でみると似たような生物群集になっている状況と言えます。これらを含んで構成される「生態系」は長期的、世界的な視点で見ると、脆く危ういという事は、もうお分かりになろうかと思います。

上に書いた「病気の発生」は、ほんの一つの例えです。病気でなくとも、気温の変化や、災害、捕食する生物の急激な増殖など、ある一つの種が絶滅しうる要因は数多くあります。
それと、ここでは病気を原因にした絶滅を例に挙げましたが、世界規模で特定の病気が短期間で伝播することは従来なら考えられませんでした。しかし、ある外来種が世界中に伝播したように、病気も容易に伝播しうるようになってしまいました。ヒトが移動手段を発達させたためです。

数多くの種類の生物が存在する事、多種多様な性質をもつ生物が各地で生息する事によって、全体的な生物の絶滅を回避し、互いが安定して生息できる環境を維持しているといえるのです。
そこで「生物多様性」が重要になるのです。

おまけ:
ここまで読んでいただければわかるかと思いますが、長い期間の中で外来種がわずかに侵入してくる程度なら、おそらく生物多様性に大きな影響を与えるおそれがないかと思います。それは、ヒトがいなくても起こり得る事です。
今の状態は、外来種が短期間に大量に、そして人為的に侵入してきている状態なのです。これは、その土地が体験した事のない規模での生態系のかく乱を引き起こします。元に戻らなくなる可能性が高いだけでは、おそらくすまないのです。

せめて、人為的な外来種(国内移入種)のまき散らしだけでも止めてほしいな、と切に願っています。

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