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ネット上の「カット野菜は薬品漬けで栄養なし」というデマの発信源は小学館

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「カット野菜に葛藤」みたいなとても面白いタイトルの、とても面白いタイトルの記事を読みまして、その記事でも本当なのかと取り上げられていた「カット野菜は薬品漬けで栄養なし」が事実なのかどうか気になって調べました。

カット野菜は便利だけどダメなの?と葛藤しなくてよいワケ – とらねこ日誌

結論から先に言えば、カット野菜に栄養はあります。多く失われてしまうのは水溶性のビタミン(とくにC、ほかB1、B2など)で、脂溶性のビタミン(A、D、E、K)は水に溶けにくいので残ります。レタスに多く含まれるβ-カロテンとかはビタミンAです。

薬品と水、洗浄方法の違いによる栄養成分への影響なし

まず「カット野菜は薬品漬けで栄養なし」の薬品に漬けることで起きる栄養の減少についての検証ですが、これについてはキューピーの研究所がカット野菜の需要が高いレタスに対して、洗浄と殺菌に使われる薬品の次亜塩素酸ナトリウムと、ただの水道水による洗浄方法の違いで栄養成分に変化があるかどうかを調べています。

結果、とくに差はなし。

 調製したカットレタスの栄養成分データについて比較した結果、いずれの栄養成分においても各調製試料間に有意な差は確認されなかった。以上の結果より、洗浄方法の違いによってカットレタスのビタミン C 及びミネラル類(カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄)に有意な損失はないことが示唆された。また、季節ごとの栄養素の変動について一定の規則性は確認されなかった。

カットレタスの洗浄方法の違いが栄養成分に及ぼす影響について – 121.pdf

薬品で洗おうが水で洗おうが、栄養成分の損失に差はありません。

「栄養成分が減る」と言っても3割ほど

ただ、そうは言っても液体につけることで栄養成分は減ります。これは事実です。ただし、“栄養なし”ではなく、水溶性の栄養成分が3割ほど減ってしまうだけです。

茨城県工業技術センターが次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌処理によるビタミンCの減少を調べた研究では、次のようなデータが残っています。

shogakukan-and-targeting-are-demagogie-media02

※表上の塩素処理とは“次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌処理”のことです。

研究課題吊(14ポイント) – N24P044.pdf

無処理の場合、59.75mgあったビタミンCが次亜塩素酸ナトリウムに10分浸すことで42.02mgに、30分で41.33mgとだいたい3割ほど減っています。

そして、カット野菜がどれくらい漬け込まれるかですが、厚生労働省のマニュアルでは上記の実験と同じ濃度では10分間漬け込むように指示されています。

97/03/17 大規模食中毒等対策について食品衛生調査会食中毒部会 – 130201_9-2.pdf

次亜塩素酸ナトリウムは消毒のために使うわけですから、10分以上漬け込む必要性はなく、殺菌処理によって減る栄養成分は水溶性のモノの3割ほどと考えて良いでしょう。

それより時間経過で栄養減るから早く食べよう

で、そんな洗浄による栄養素の減少より気をつけないといけないのは時間経過による減少です。

山形県立米沢女子短期大学が発表した論文では、冷蔵庫に5日間入れておいたカット済みのキャベツはビタミンCが20%減少、キュウリに至ってはビタミンCがほぼゼロになったとあります。

 カット後の冷蔵保存5日目のビタミンC量の減少はキャベツでは約20%であったが、キュウリのビタミンCはほとんど残存していなかった。

CiNii 論文?-? カット野菜のビタミンC含量に及ぼすウコギ抽出液の影響

洗浄どうこうより時間を置く方がヤバいものもあるんです。つまり、栄養を気にするならカット野菜の種類によっては買ったその場でパッケージから出してバリバリ食べるのがベスト。

ちなみに論文の中身は「でもウコギ抽出液に漬けたらそんなに栄養素減らなかった。カットした野菜にウコギ抽出液、いいね!」という内容です。

「カット野菜は薬品漬けで栄養なし」の発信源は小学館運営のニュースサイト

それでこの困った「カット野菜は薬品漬けで栄養なし」の発信源ですが、Googleで“カット野菜”で調べると上位に2ちゃんねるまとめサイトが出ます(調査開始時点では一番上だったのですが、今ググったら下がってました。もちろんパーソナライズ検索は無効にしています)。

shogakukan-and-targeting-are-demagogie-media03

そのまとめサイトのソースとなってるのが、“犯罪のターゲットになりやすい女性が、安心して生活するために必要な情報をお送りする『WooRis(ウーリス)』”というサイトが今年6月に出したこちらの記事です。

実は薬品漬け!? 市販の「カット野菜」では栄養がとれない | WooRis(ウーリス)

記事で取り上げられているのは『じつは体に悪い19の食習慣』という本の一節なのですが、中田綾美さんというライターが煽ってこんなことを書いてます。

■市販のカット野菜は薬品漬けにされた不自然なもの

自宅で野菜をカットして、プラスチック容器に入れて放置しておくのです。しばらく経つと、色は変わりしんなりして、夏場なら変なにおいがしてきます。

これが野菜の自然な姿です。工場で作られて、お店まで運ばれ、さらに売り場で何時間か経ったにもかかわらず、カット野菜がみずみずしいままでいられるのは、やはり不自然だと見ていいのではないでしょうか。

市販のカット野菜は、見た目の鮮度を保つために薬品漬けにされたもの。その薬品を落とすために水で何度も洗浄された結果、栄養素などほとんど残っていないことをぜひ頭に置いておきましょう。

実は薬品漬け!? 市販の「カット野菜」では栄養がとれない | WooRis(ウーリス)

少なくとも引用されている本の文章では“薬品漬け”などという単語は出てきてないのですが、このライターさんが「薬品漬け」「不自然」と“女性が安心して生活するために必要な情報”としてお送りしたために急激にネットで広まっていったようです。

ほかの2ちゃんねるまとめサイトでもソースになっており、この小学館のニュースサイトが「カット野菜は薬品漬けで栄養なし」の発信源と見て良いでしょう。

最初に紹介したブログでは『It Mama』というニュースサイトの記事を取り上げていますが、このIt Mamaを運営しているターゲッティング株式会社が、じつはWooRisの広告出稿に携わってたりしてるんですねー。いやー、炎上した記事をべつのサイトで書いてまた火を起こすとかやるなー。感心しちゃうなー。

何が「私たちは良質なコンテンツ・メディアを運営する方々を収益面から支援する新しいタイプの広告会社です」だ。どこぞのサラリーマン叩いてPV集めてる炎上系サイトとやってること変わらないじゃないか。小学館もターゲッティング株式会社も死ねばいいと思います。

カット野菜の栄養成分がそのままのものに比べて減っているのは事実ですが、水溶性の栄養成分がすべてなくなるわけではありませんし、脂溶性の栄養成分は水に溶け出さないので残っています。極論を書いたり、不安を煽ったりしてPVを集める手法は小学館という企業としてどうなんですかねぇ……。



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