11月になると各地の神社仏閣で酉の市が行なわれます。
その由来としてよく言われるのがヤマトタケル(日本武尊)の東征にまつわるもので、ヤマトタケルは東征に際して、現在の久喜市鷲宮の鷲宮神社の地で戦勝を祈願し、東征の帰路、現在の足立区花畑の大鷲神社の地(当時は花又)で戦勝を祝って御礼参りをしたというものです。
このヤマトタケルが亡くなった日が11月の酉の日(あるいは12月の初酉の日)だったと言われたり、ヤマトタケルが御礼参りをした日が11月の酉の日だったと言われます。
なお、花畑大鷲神社のリーフレットでは、ヤマトタケルの東征の本陣が花又(花畑)にあったとされ、応永年間(1394年〜1428年)よりヤマトタケルの命日(11月の酉の日)に報恩感謝の祭りが行なわれるようになって、これが酉の市の発祥とされています。
酉の市は11月の酉の日に行なわれるのが一般的です。
日の十二支は12日ごとにまわっているため、1ヶ月30日のあいだに同じ十二支の日は2回か3回あります。
一の酉が1日〜6日であれば、二の酉は13日〜18日、三の酉は25日〜30日となり、一の酉が7日〜12日であれば、二の酉は19日〜24日で、三の酉はありません。
これが各地で行なわれる酉の市の一般的な日程ですが、なかには変わったところもあり、例えば板橋区西台の善長寺・大鷲神社の酉の市は、11月の一の酉から数えて4回目の酉の日とされています。
11月の一の酉から数えて4回目の酉の日ということは、11月が二の酉までの年は12月の二の酉、11月が三の酉までの年は12月の一の酉の日ということですね。
また、久喜市鷲宮の鷲宮神社などでは12月の初酉の日(一の酉の日)とされています。
この他、「酉の日」に限らず毎年12月の決まった日に酉の市(おかめ市)が行なわれている神社仏閣も埼玉県など各地にあります。
おもな酉の市(おかめ市)の日程
日にち | 場所 | 名称 |
---|---|---|
11月初酉日 2014年は11月10日 2015年は11月5日 2016年は11月11日 |
足立区 花畑大鷲神社 台東区 浅草鷲神社 台東区 浅草長國寺 新宿区 四谷須賀神社 新宿区 花園神社 府中市 大國魂神社 など各地 |
酉の市(一の酉) |
11月中酉日 2014年は11月22日 2015年は11月17日 2016年は11月23日 |
足立区 花畑大鷲神社 台東区 浅草鷲神社 台東区 浅草長國寺 新宿区 四谷須賀神社 新宿区 花園神社 府中市 大國魂神社 など各地 |
酉の市(二の酉) |
11月下酉日 2014年は無し 2015年は11月29日 2016年は無し |
足立区 花畑大鷲神社 台東区 浅草鷲神社 台東区 浅草長國寺 新宿区 四谷須賀神社 新宿区 花園神社 府中市 大國魂神社 など各地 |
酉の市(三の酉) |
12月初酉日 2014年は12月4日 2015年は12月11日 2016年は12月5日 |
久喜市 鷲宮神社 印旛郡栄町 大鷲神社 |
大酉祭 安食の酉市 |
11月四の酉 2014年は12月16日 2015年は12月11日 2016年は12月17日 |
板橋区 善長寺境内 板橋区 西台大鷲神社 |
熊手市 |
12月第1土・日曜 2014年は12月6・7日 2015年は12月5・6日 2016年は12月3・4日 |
幸手市 荒宿浅間神社 | 酉の市 |
12月2日 | 越谷市 大沢香取神社 | 香取市(おかめいち) |
12月3日 | 川越市 熊野神社 | 酉の市 |
12月4日 | 鴻巣市 鴻神社 | 酉の市 |
12月5日 | 深谷市 瀧宮神社 | 酉の市 |
12月6日 | 北区 王子神社 | 熊手市 |
12月6日 | 行田市 愛宕神社 | 酉の市 |
12月6日 | 比企郡小川町 緑町不動尊 | 酉の市 |
12月8日 | 熊谷市 高城神社 | 酉の市 |
12月8日 | 横浜市金沢区 瀬戸神社 | 歳の市 |
12月10日 | さいたま市大宮区 氷川神社 | 十日市(とおかまち) |
12月10日 | 伊勢崎市 嵯珂比神社 | 酉の市 |
12月12日 | さいたま市浦和区 調神社 | 十二日まち (じゅうにんちまち) |
12月14日 | 春日部市 粕壁神明神社 | 酉の市 |
12月15日 | 川口市 川口神社 | おかめ市 |
12月15日 | 東松山市 大鳥神社 | 酉の市 |
12月15日 | 越谷市 久伊豆神社 | 縁起市 |
12月16日 | 渋川市 並木町八坂神社 | 酉の市 |
12月17日 | 蕨市 和楽備神社 | おかめ市 |
12月19日 | 川口市 飯塚氷川神社 | おかめ市 |
12月21日 | 足立区 西新井大師 | 納めの大師 |
12月23日 | 川口市 鳩ヶ谷氷川神社 | おかめ市 |
酉の市(おかめ市)というと熊手がつきものですが、この熊手はどのように飾っていますでしょうか?
熊手は福をかっこむために新年の恵方に向けるという人もいるようですが、実は恵方は関係ありません。
神社では熊手は神札・お守りに準じるという扱いのため、神棚に入る大きさなら神棚に祀ります。
神棚に祀らない場合は、北側や西側の高いところに南向きか東向きに飾ります。
玄関に飾る場合は、入り口に向けて少し高いところに飾ります。
三の酉の年は火事が多い?
三の酉に関する俗説に「三の酉の年は火事が多い」というものがあります。
その由来は諸説あるようですが、江戸三大大火の1つ明暦の大火(振袖火事・丸山火事)をきっかけに広まったという説もあります。
しかし、明暦の大火が起きたのは明暦3年の1月ですが、その年の11月は二の酉までしかありませんでした。
三の酉まであったのは明暦2年の11月ですが、どうして明暦3年の大火と結びつけられたのでしょうか?
これについては、酉の市は翌年のことを祈る祭りであることから、「三の酉の年は火事が多い」というときの1年は酉の市のある11月からの1年と考えればいいでしょう。
ちなみに、年月日を十二支で表わすときは、11月が「子の月」となります。
これは、かつては冬至が作暦の基準で、冬至のある月(旧暦11月)を1年の始まり(子の月)とした名残ともいわれています(詳しくは「冬至の豆知識」「1月1日はなぜ冬至の約10日後になったのか?」をご覧ください)。
ともあれ、ここで実際に11月からの1年以内に江戸・東京で有名な火災があった年について、それが二の酉の年か三の酉の年かをみてみましょう。
過去の11月の 酉の日の日数 |
左記1年以内の 火災の発生日 |
左記の火災の名称 (太字は江戸三大大火) |
---|---|---|
明暦2年11月5・17・29日 三の酉 |
明暦3年1月18日 (1657年3月2日) |
明暦の大火 振袖火事・丸山火事 |
天和2年11月6・18・30日 三の酉 |
天和2年12月28日 (1683年1月25日) |
天和の大火 お七火事 |
元禄10年11月9・21日 二の酉 |
元禄11年9月6日 (1698年10月9日) |
勅額火事・中堂火事 元禄江戸大火 |
元禄16年11月7・19日 二の酉 |
元禄16年11月29日 (1704年1月6日) |
水戸様火事 |
享保元年11月5・17・29日 三の酉 |
享保2年1月22日 (1717年3月4日) |
小石川馬場火事 |
延享元年11月12・24日 二の酉 |
延享2年2月12日 (1745年3月14日) |
六道火事 |
宝暦9年11月3・15・27日 三の酉 |
宝暦10年2月6日 (1760年3月22日) |
宝暦の大火 明石屋火事 |
明和8年11月1・13・25日 三の酉 |
明和9年2月29日 (1772年4月1日) |
明和の大火 目黒行人坂大火 |
文化2年11月12・24日 二の酉 |
文化3年3月4日 (1806年4月22日) |
文化の大火 車町火事・牛町火事 丙寅の大火 |
文政11年11月1・13・25日 三の酉 |
文政12年3月21日 (1829年4月24日) |
文政の大火 神田佐久間町の火事 |
天保4年11月7・19日 二の酉 |
天保5年2月7日 (1834年3月16日) |
甲午火事 |
弘化元年11月10・22日 二の酉 |
弘化2年1月24日 (1845年3月2日) |
青山火事 |
安政元年11月8・20日 二の酉 |
安政2年10月2日 (1855年11月11日) |
地震火事 |
明治43年11月4・16・28日 三の酉 |
明治44年4月9日 (1911年4月9日) |
吉原の大火 |
大正11年11月1・13・25日 三の酉 |
大正12年9月1日 (1923年9月1日) |
関東大震災 |
昭和7年11月8・20日 二の酉 |
昭和7年12月16日 (1932年12月16日) |
白木屋大火 |
昭和19年11月5・17・29日 三の酉 |
昭和20年3月10日 (1945年3月10日) |
東京大空襲 |
昭和56年11月3・15・27日 三の酉 |
昭和57年2月8日 (1982年2月8日) |
ホテルニュージャパン 火災 |
これをみると多いような偶然のような微妙な回数ですが、俗説の真偽はともかく、火事には気をつけたいものですね。
参考サイト
三の酉の年は火災が多い? – 東京消防庁
熊手・御守等の祀り方 – 浅草 鷲神社
酉の市Q&A – 浅草酉の市/長國寺
関東の酉の市 – 浅草酉の市/長國寺
熊手の画像はhttp://www.fumira.jp/にあるフリー素材です。