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読書感想文の書き方とポイント【蟹工船】を例に

読書感想文

読書感想文の書き方とポイント【蟹工船】を例に

【はじめに】

読書感想文、なぜ書けないのでしょうか。理由は人によってそれぞれ違うと思いますが、そもそも国語の教科書程度でしか「読む(≒読書)」という行為(≒習慣)がないのではないでしょうか。国語の授業で「読み解く力」を勉強している途中なのに「読書感想文を書け」これは難しい作業だと思います。

 

また「読書」してその「感想」を「文」にする、それが評価されると思うと心理的な負担が大きくなってしまうのではないかと思います。「読書感想文」という言葉の魔力に取りつかれ、意識し過ぎてしまい書けなくなってしまうのです。

 

日ごろから読む習慣を身につけましょう。最初は新聞や雑誌でも構いません。しかし必ず毎日1行でも良いから読みましょう。これは読書感想文に限らず外国語の勉強英語などでも通用します。「継続は力なり」です。

ポイント

    毎日文章を読む

 

【読書する】

では、実際に読んでみましょう。読書感想文を書く時には、本は3回読むと効果的です。

 

[1回目の読書]

1回目は「読書しよう」と身構えず、どういう内容なのかを確認しながら読みましょう。但し、気になった場面や引用したい文は付箋を貼るなどしましょう。付箋にメモしておくのも効果的です。

 

ポイント

    付箋を貼り、メモしておく

 

[2回目の読書]

2回目は付箋を貼った部分をもう一度読み返してみましょう。何が気になったのか、自分はどう思ったのか、という部分です。頭の中で整理できれば良いですが、最初は難しいと思いますので、別の用紙にリストアップすると良いでしょう。

 

ポイント

    気になった部分をリストアップする

[3回目の読書]

可能なら、もう1度小説を読んでみましょう。3回目は文章に隠された作者の意図や想いを意識しながら読みましょう。この時、鍵となる言葉を頭に入れておくと良いでしょう。具体的には「プロレタリア文学」「労働者と資本家」「資本家の不当な搾取」「労働者の団結」「階級闘争」などです。これから何を読み取るかが大切です。つまり…

 

ポイント

    「行間」を読む

 

【私的見解】

1回読んだ ⇒ 目を通した

2回読んだ ⇒ 読んだ

3回読んだ ⇒ 熟読した

 

【書く】

ここで初めて感想文を書いてみます。書き方はHPなどにも載っていますが、簡潔にまとめてみました。以下を参考に、自分の心に素直になって思ったことや感じたことを書きましょう。但しいきなり書くのではなく、必ず下書きをしましょう。書き終わった後に確認の作業があるからです。

 

ポイント

    下書きをする

 

【書き方】

では、実際に書いてみましょう。ここでは蟹工船 ( 小林多喜二 著 , 新潮社 )を例に取ってみます。

1.文の組立て

読書感想文は3つの構成に分けます。

 

(1)はじめ(または前置き、導入、序論、諸論など)

これから書こうとすることについて書きます。「○○という本を読んだこと」でも構いませんが、それに織り交ぜて自分の体験したことや経験したことについて書くと良いでしょう。

例)

冒頭の「おい地獄さ行ぐんだで!」という言葉に、私は心を砕かれるようなショックを受けました。会話から始まる小説はあまり出合った事がないのですが、蟹工船ではその言葉があまりにも衝撃的だったからです。

(2)なか(または主旨、要旨、本論、主題など)

物語における時間の流れやできごとに沿って、いくつかの文を書きます。文中の言葉を引用したり、自分の考えや気持ち、体験したことや経験したことを具体的に振り返って書くと良いでしょう。

引用例)

・「おい地獄さ行ぐんだで!」(P8)

 

・皆十四、五の少年ばかりだった。(P9)

 

・子供の食うのを見ながら、自分では剥いたぐるぐるの輪になった皮を食っている。(P11)

 

・それがこの前のガス爆発で、危く死に損ねてから―前に何度かあった事だが―フイと坑夫が恐ろしくなり、鉱山を下りてしまった。(P14)

 

・彼はその時壁の後から、助ければ助けることの出来る炭坑夫の、一度聞いたら心に縫い込まれでもするように、決して忘れることの出来ない、救いを求める声を「ハッキリ」聞いた。(P15)

 

・その事を聞いていた若い漁夫は、「さあ、ここだってそう大して変らないが……」と云った。(P15~16)

 

・朝暗いうちから畑に出て、それで食えないで、追払われてくる者達だった。長男一人を残して―それでもまだ食えなかった―女は工場の女工に、次男も三男も何処かへ出て働かなければならない。(P16)

 

・そして、こういうてんでばらばらのもの等を集めることが、雇うものにとって、この上なく都合のいいことだった。(函館の労働組合は蟹工船、カムサツカ行の漁夫のなかに組織者を入れることに死物狂いになっていた。青森、秋田の組合などとも連絡をとって。―それを何より恐れていた。)(P19)

 

・お前なんぞ、船長と云ってりゃ大きな顔してるが、糞場の紙位えの値打もねえんだど。(P31)

 

・「人情味なんか柄でもなく持ち出して、国と国との大相撲がとれるか!」唇を思いッ切りゆがめて唾(つば)をはいた。(P32)

 

・蟹工船は「工船」(工場船)であって、「航船」ではない。だから航海法は適用されなかった。(P34)

 

・それに、蟹工船は純然たる「工場」だった。然し工場法の適用もうけていない。(P34~35)

 

・「監獄だって、これより悪かったら、お目にかからないで!」(P40)

 

・「こんな事に一々ビク、ビクしていたら、このカムサツカまでワザワザ来て仕事なんか出来るかい。」(43)

 

・「所が、浅川はお前達をどだい人間だなんて思っていないよ。」(P43)

 

・夕方になるまでに二艘を残して、それでも全部帰ってくることが出来た。どの漁夫も本船のデッキを踏むと、それっきり気を失いかけた。一艘は水船になってしまったために、錨を投げ込んで、漁夫が別の川崎に移って、帰ってきた。他の一艘は漁夫共に全然行衛不明だった。(P45)

 

・翌日、川崎の捜索かたがた、蟹の後を追って、本船が移動することになった。「人間の五、六匹何んでもないけれども、川崎がいたまし」かったからだった。(P45)

 

・漁夫は何時でも「安々と」死ぬ覚悟をすることに「慣らされて」いた。(P50)

 

・「帰ってきたくはなかった」誰が、こんな地獄に帰りたいって!(P50~51)

 

・「だから、貴方方、プロレタリア。――分る?」(P51)

 

・ものを云うだけのぜいたくな「余分」さえ残っていなかった。(P59)

 

・彼等は寝れずにいるとき、フト、「よく、まだ生きているな……。」と自分で自分の生身の身体にささやきかえすことがある。よく、まだ生きている。――そう自分の身体に!(P61)

 

・「何んだか、理窟は分らねども、殺されたくねえで。」(P62)

 

・一寸、皆だまった。何かにグイと心を「不意」に突き上げられた――のを感じた。(P63)

 

・お湯には、初め一日置きに入れた。身体が生ッ臭くよごれて仕様がなかった。然し一週間もすると、三日置きになり、一カ月位経つと、一週間一度。そしてとうとう月二回にされてしまった。水の濫費を防ぐためだった。然し、船長や監督は毎日お湯に入った。それは濫費にはならなかった。(P73)

 

・雑巾切れのように、クタクタになって帰ってくると、皆は思い合わせたように、相手もなく、ただ「畜生!」と怒鳴った。暗がりで、それは憎悪に満ちた牡牛の唸り声に似ていた。(P80)

 

・前の日は十時近くまでやって、身体は壊れかかった機械のようにギクギクしていた。タラップを上りながら、ひょいとすると、眠っていた。(P81)

 

・誰だって身体がおかしくなっていた。イザとなったら「仕方がない」やるさ。「殺されること」はどっち道同じことだ。そんな気が皆にあった。――ただ、もうたまらなかった。(P83)

 

・彼等はその何処からでも、陸にある「自家」の匂いをかぎ取ろうとした。(P84)

 

・荷物の中には何んでもないことで、然し妻でなかったら、やはり気付かないような細かい心配りの分るものが入っていた。そんな時は、急に誰でも、バタバタと心が「あやしく」騒ぎ立った。――そして、ただ、無性に帰りたかった。(P85)

 

・公平に云って、上の人間はゴウマンで、恐ろしいことを儲けのために「平気」で謀んだ。漁夫や船員はそれにウマウマ落ち込んで行った。(P96)

 

・「では、誰が殺したか? ――云わなくたって分っているべよ!僕はお経でもって、山田君の霊を慰めてやることは出来ない。然し僕等は、山田君を殺したものの仇をとることによって、とることによって、山田君を慰めてやることが出来るのだ。――この事を、今こそ、山田君の霊に僕等は誓わなければならないと思う……。」(P103)

 

・「俺達、死んでからも、碌な目に合わないんだ……。」(P105)

 

・「手前え、何んだ。あまり威張ったことを云わねえ方がええんだで。漁に出たとき、俺達四、五人でお前えを海の中さタタキ落す位朝飯前だんだ。――それッ切りだべよ。カムサツカだど。お前えがどうやって死んだって、誰が分るッて!」(P108)

 

・それは今迄「屈従」しか知らなかった漁夫を、全く思いがけずに背から、とてつもない力で突きのめした。(P109)

 

・そう分ると、今度は不思議な魅力になって、反抗的な気持が皆の心に喰い込んで行った。今迄、残酷極まる労働で搾り抜かれていた事が、かえってその為にはこの上ない良い地盤だった。――こうなれば、監督も糞もあったものでない! 皆愉快がった。(P109)

 

・「一人と一人じゃ駄目だ。危い。だが、あっちは船長から何からを皆んな入れて十人にならない。ところがこっちは四百人に近い。四百人が一緒になれば、もうこっちのものだ。十人に四百人! 相撲になるなら、やってみろ、だ。」そして最後に「殺されたくないものは来れ!」だった。(P111)

 

・――何時でも会社は漁夫を雇うのに細心の注意を払った。募集地の村長さんや、署長さんに頼んで「模範青年」を連れてくる。労働組合などに関心のない、云いなりになる労働者を選ぶ。「抜け目なく」万事好都合に!然し、蟹工船の「仕事」は、今では丁度逆に、それ等の労働者を団結――組織させようとしていた。いくら「抜け目のない」資本家でも、この不思議な行方までには気付いていなかった。それは、皮肉にも、未組織の労働者、手のつけられない「飲んだくれ」労働者をワザワザ集めて、団結することを教えてくれているようなものだった。(P113)

 

・水夫、火夫も完全に動員された。勝手に使いまわされた。船長はそれに対して一言も云えなかった。船長は「看板」になってさえいれば、それで立派な一役だった。(P115)

 

・「この船全体が会社のものなんだ、分ったか!」ウァハハハハハと、口を三角にゆがめて、背のびするように、無遠慮に大きく笑った。(P116)

 

・漁夫達は、彼や学生などの方を気の毒そうに見るが、何も云えない程ぐッしゃりつぶされてしまっていた。学生の作った組織も反古のように、役に立たなかった。(P116)

 

・「殺されるッて分ったら? 馬鹿ア、何時だ、それア。――今、殺されているんでねえか。小刻みによ。彼奴等はな、上手なんだ。ピストルは今にもうつように、何時でも持っているが、なかなかそんなヘマはしないんだ。あれア「手」なんだ。――分るか。彼奴等は、俺達を殺せば、自分等の方で損するんだ。目的は――本当の目的は、俺達をウンと働かせて、締木(しめぎ)にかけて、ギイギイ搾り上げて、しこたま儲けることなんだ。そいつを今俺達は毎日やられてるんだ。――どうだ、この滅茶苦茶は。まるで蚕に食われている桑の葉のように、俺達の身体が殺されているんだ。」(P117~118)

 

・「そうするべ。――非道え奴だ。ちゃんと大暴風になること分っていて、それで船を出させるんだからな。――人殺しだべ!」(P123)

 

・「ストライキやったんだ」(P126)

 

・「諸君、とうとう来た! 長い間、長い間俺達は待っていた。俺達は半殺しにされながらも、待っていた。今に見ろ、と。しかし、とうとう来た。諸君、まず第一に、俺達は力を合わせることだ。俺達は何があろうと、仲間を裏切らないことだ。これだけさえ、しっかりつかんでいれば、彼奴等如きをモミつぶすは、虫ケラより容易いことだ。――そんならば、第二には何か。諸君、第二にも力を合わせることだ。落伍者を一人も出さないということだ。一人の裏切者、一人の寝がえり者を出さないということだ。たった一人の寝がえりものは、三百人の命を殺すということを知らなければならない。一人の寝がえり……(「分った、分った」「大丈夫だ」「心配しないで、やってくれ」)……(P127~128)

 

・「俺達の交渉が彼奴等をタタキのめせるか、その職分を完全につくせるかどうかは、一に諸君の団結の力に依るのだ」(P128)

 

・「監督をたたきのめす!」そんなことがどうして出来るもんか、そう思っていた。ところが! 自分達の「手」でそれをやってのけたのだ。(P132)

 

・「馬鹿な!――国民の味方でない帝国の軍艦、そんな理窟なんてある筈があるか!?」(P133)

 

・「有無」を云わせない。「不届者」「不忠者」「露助の真似する売国奴」そう罵倒されて、代表の九人が銃剣を擬されたまま、駆逐艦に護送されてしまった。それは皆がワケが分らず、ぼんやり見とれている、その短い間だった。全く、有無を云わせなかった。―― 一枚の新聞紙が燃えてしまうのを見ているより、他愛なかった。 ――簡単に「片付いてしまった。」(P134)

 

・いくら漁夫達でも、今度という今度こそ、「誰が敵」であるか、そしてそれ等が(全く意外にも!)どういう風に、お互が繋がり合っているか、ということが身をもって知らされた。(P135)

 

・「俺達には、俺達しか味方が無えんだ。」 それは今では、皆の心の底の方へ、底の方へ、と深く入り込んで行った。――「今に見ろ!」 然し「今に見ろ」を百遍繰りかえして、それが何になるか。――ストライキが惨めに敗れてから、仕事は「畜生、思い知ったか」とばかりに、過酷になった。それは今までの過酷にもう一つ更に加えられた監督の復仇的な過酷さだった。限度というものの一番極端を越えていた。――今ではもう仕事は堪え難いところまで行っていた。(P135~136)

 

・「そうだよ。今度こそ、このまま仕事していたんじゃ、俺達本当に殺されるよ。犠牲者を出さないように全部で、一緒にサボルことだ。この前と同じ手で。吃りが云ったでないか、何より力を合わせることだって。それに力を合わせたらどんなことが出来たか、ということも分っている筈だ。「それでも若し駆逐艦を呼んだら、皆で――この時こそ力を合わせて、一人も残らず引渡されよう! その方がかえって助かるんだ。」(P136~137)

 

・「ん、もう一回だ!」 そして、彼等は、立ち上った。――もう一度!(P137)

 

(3)おわり(またはまとめ、むすび、結果、結論、結語、総括など)

自分の考えや感想を書きます。

 

例1)
やはり私は労働者が劣悪な環境で酷使され、人を人として扱わない浅川は許されない、と思いました。労働者が諦めずに何度でも立ち上がる姿に感銘を受けました。私は将来どんな仕事に就くかは分かりませんが、この労働者達のように絶対に負けない心を持ち、仲間を大切にしようと思います。

 

例2)
僕は「常勝」という信念を持ってサッカー部の主将を務めています。チームをまとめるにあたり、全員の意見を聞きますが、やはり一部の部員には妥協してもらわなければなりません。部長先生をトップとして、その下に主将の僕がいます。そのため、蟹工船の監督である浅川の気持ちがよく分かります。いくら自分達の意見や要求を通したいからといって、ストライキが行われると組織として機能しなくなる可能性があります。ストライキは絶対に良くないことだと思いました。僕はこのようなことがないようしっかりとチームを管理して部を機能させたいと思います。

 

ポイント 1

ここでは個々の労働者の独自な階層的・個人的な容貌が十分にはっきりと示されていない。そのために全体としての集団の力はかなりダイナミックに示されているが、個々の形象がはっきりと印象づけられない結果をともなった。(P277 解説 蔵原惟人)

ポイント 2
登場人物(個人名)

健吉、竹田、宮口、山田、浅川

ポイント 3
登場人物(職業名)

漁夫、雑夫、船長、周旋屋、坑夫、薬屋、商人、職工、土工、百姓、給仕、署長、折鞄、船長、工場代表、雑夫長、水兵、賄、係、重役、学生上り、学生、船医、火夫、水夫、大工、船頭、無電係、船員、巡査、人夫、小作人、弁士、社長、代議士、役人、兵隊、コック、局長

【確認する】

自分が書いた文章を読み返してみましょう。あるいは家族の方に確認してもらいましょう。必ずおかしい点があるはずです。

 

チェックポイント

・あらすじばかりが書かれていないか

・段落変えはきちんとできているか

・主語と述語の関係はおかしくないか

・誤字脱字はないか

・自分の伝えたいことがきちんと書かれているか

 

 

以上を踏まえれば、読書感想文は書けるはずです。

では、頑張って下さい。



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