稟議書をはじめとするビジネス文書や法律関係の文章で目にすることの多い「鑑(かんが)みる」。漢字自体は中学校で習うものですが、案外使い方に注意が必要な漢字のひとつです。皆さんは「~を鑑みる」は誤用で、「~に鑑みる」が正しい使い方であると知ってましたか?
▶「鑑みる」の読み方
・かんが(みる)
稟議書をはじめとするビジネス文書で使うことも多い。
-だけど使い方に注意が必要な「鑑みる」
-「~”を”鑑みる」は誤用だった
よく使われる「~”を”鑑みる」。「〜”を”考える」という意味で使われていることが多い。
▶「鑑みる」の誤用文例 ①
× 大手ライバル企業の出荷実績「を」鑑みると、この数字は悪くはない
▶「鑑みる」の誤用文例 ②
× わが国が成し遂げた進歩「を」鑑みるに
仕事上の文書では結構「~を鑑みる」を目にします
近年は若者だけでなく、テレビや評論誌等でも「~を鑑みる」という表現がやたら目につきます
-「鑑みる」本来の意味に立ち戻って考えてみると分かる
「鑑みる」とは、単に「〜”を”考える」という意味ではなく、「(過去の例・手本)”に”照らして考える」というのが本来の意味。
▶「鑑みる」の意味 ②
・《過去の例・手本》「に」照らして考える
-というわけで「~に鑑みる」が正しい使い方となる
▶「鑑みる」の正しい使用文例 ①
○ 事態の進展「に」鑑みて、残念ながら計画の一部を変更せざるをえない
事態の進展《←過去の例・手本》「に」照らして考える。
▶「鑑みる」の正しい使用文例 ③
○ 朕深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現状ト「ニ」鑑ミ
昭和天皇の玉音放送の一節。世界の大勢と日本の現状《←過去の例・手本》と「に」照らして考える。
▶「鑑みる」の正しい使用文例 ④
○ 人は流水「に」鑑みる莫くして、止水「に」鑑みる
読み:ひとはりゅうすいにかんがみるなくして、しすいにかんがみる
意味:人は誰でも、流れる水ではなく穏やかな水に自分を映す
「明鏡止水」のもとになった孔子の言葉。ちなみに「鑑みる」の「鑑」は本来、「鏡」という意味がある。
-では、なぜ「~を鑑みる」となったのか?
「〜を考慮して」という表現との混同があるのだろう
出典Ted’s Coffeehouse 2: 「鑑みる」の用法 (How to Use the Japanese Word “Kangamiru”)
「~を考慮する」的な意味合いで「~を鑑みる」が使われがち
「~を鑑みる」は単純に「~を考える」の誤用ではないか
「~を鑑みる」としてしまう理由
① 音の近さ :「かんがえる」と「かんがみる」
② 意味の近さ:「鑑みる=照らして考える」と「考える」
-「どっちでもいいじゃん」とは思わずに
「鑑みる」という言葉を使う以上は正しい使い方を心掛けたいところ。
特に稟議書をはじめとするビジネス文書などではなおさら。
【日本語がおかしいぞ】何度でも言いますが、「鑑みる」の用法は「~に鑑みる」です。「~を鑑みる」は間違い!もうどうしようもなく蔓延しているので5年後には「を」で辞書に載るのかな……。でもまだしばらくは言う。どなたか気が向いたらリツイートしてくださいましね。この状況の深刻さに鑑みて。
-しかし、いずれは
「~を鑑みる」という誤用の用例が増殖してきており、そう遠くない将来、誤用が誤用でなくなる日がくるかもしれない