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緋の稜線(佐伯かよの)のネタバレとあらすじ!

マンガ

今回は「佐伯かよの」先生の『緋の稜線』というマンガを読んだので、ご紹介したいと思います。

※記事中にはネタバレを含みますので、お先に立ち読みをお勧めします!
ココなら無料で見れますよ。

あらすじ

昭和元年、胡桃澤家に生まれた女の子は瞳子(とうこ)と名付けられた。
大きくなるとお茶やお花の稽古をサボって隣家の新之助と一緒にガキ大将と喧嘩をするようなお転婆に育っていった。

瞳子は母や姉と違い、決められた相手ではなく結婚相手も自分で決めたいと考えていた。
女学校卒業の年となり、進学に迷っていたある日、事故でお堀に落ちた瞳子は通りすがりの男に助けられる。

人工呼吸を人前で接吻されたと嘆く母は、このことが知れ渡る前にと強引に瞳子のお見合いを進めるが―。

ネタバレ

とても骨太の作品です。TVドラマになったので、うっかり昼メロのような女の一生ドロドロメロドラマだと思ってたら違いました。(作者様、ファンの皆様すみません)
「女の一代記」 には違いなく、巻数は 25巻 と大変な長編です。そして戦前、戦中・戦後・昭和の終わりまでの歴史・風俗・建物などをよく検証して描いてあります。これも作者にとっては当たり前のことで、ここでこんな事を言うのは大変失礼なことかもしれませんが。

主人公の 瞳子(とうこ) は終戦時19歳という事ですから、うちに同居している84歳の叔母より一つ下の設定でほぼ同年代です。叔母の話や何かで読んだ終戦直後からしばらくの話があちこちに戦後の世相として出てきます。

特攻帰り (くずれ) のヤクザの話
配給物資の食糧だけで暮らし、死にそこなった大学教授
(実際に闇米を拒否して食糧管理法に沿った配給食糧のみを食べ続け、栄養失調で死亡した事で知られる佐賀県出身の裁判官がいる。)
当時流行りのファッションやバッグなどの造形
テキヤが仕切っていた闇市の活気のある様子
細かいところではケーキのことを 洋生(ようなま) という 等々

中でも百貨店の御曹司に嫁いだ 瞳子 が戦争で義父や百貨店を失くし、夫も帰ってこない中、失意の家族を励ましながら百貨店再生に奔走する、というくだりがあるのですが、叔母に聞いた話とちょっと重なります。

叔母が30歳になってから初めて勤めに出た会社は、女社長がやっているブラウスの問屋さんでした。そこの社長さんは戦争から帰って来て ふぬけ になっている夫を見限り、子供を育てるために米兵相手のお土産物から始まって銀座和光にあった PX (post exchange 基地内売店) にも店を出すようになったそうです。このエピソードがそっくりですね。当時はこういうしっかりした商売人は他にもいたでしょうが。

その後その女社長さんの会社は順調に成長し、叔母が入った昭和30年頃は人出不足でBG (ビジネスガール) の募集をしていたんでしょう。字の綺麗な叔母は気に入られ、その後34年ほどこの会社に勤めました。
昭和40年代、50年代くらいまでは業界でも有名な女社長さんだったようです。しかし娘婿の代になり、ブラウスそのものも以前よりは売れなくなって10年ほど前でしたかついに倒産してしまいました。叔母は元同僚にそれを聞いて寂しそうでしたね。

それはさておき世の中が落ち着き、夫も戻って商売もいよいよ大きくなっていく中盤でも、「おしん」 のモデルになった ヤオハン の創業者のひとりを思わせるエピソードがあったり、私鉄沿線の開発の仕方が描かれていたり。
中・高年の読者には戦後商業史の表裏を読めてこれが結構面白いんですよ。
モデル探しをしたり、文献を出せと言っているんではなくて、よく調べて噛み砕いて分かりやすく描いているな~と感心するんです。連載中も老若男女多くのファンからの支持があったといいますから、過去を知らない人でも楽しめるのでしょう。

瞳子の二番目の姉が前半の人間たちを繋ぐ狂言回し的な役割で出てきます。彼女は、 社会主義者の恋人 を殺され、戦後は新聞記者になったりテキヤの女房になったり、主人公の瞳子より波乱万丈な人生を送りますが、他にも様々な個性的女性が登場して女の人生見本市みたいです。これも自分の平凡な一生とひき比べてマンガを読む醍醐味を感じますね。

中盤の狂言回しは義理妹の 和音 (かずね) さん。彼女は女優になりますが、ずっと実家にいるのでみんなの事情がよく分かり、読者の目となって物語を俯瞰しています。しかし彼女の人生にもにもドラマがあり、実在の有名監督を彷彿とさせるような監督が出てきたりします。(もちろん、そのまま事実ではありません)

11巻からは子供達の時代が始まり、何とか表面は落ち着いてきた大人達に変ってあっちこっち悩んだり突っ走ったりやってくれます。(笑)
あまりあらすじばらししても何なのでもうやめときますが、時間のある時にじっくりと読みたい大河マンガの一つです。

感想

まるで自分自身の人生を振り返っているかのように錯覚するぐらい、ヒロインと共に物語の中で生きていくような印象を感じるほど引き込まれていく女の人生を描いた壮大な物語です。

昭和元年、戦中真っ只中に青春時代をむかえる瞳子は母や姉のような男性に隷属する生き方にひとり疑問を持っている。

今でこそいろいろな生き方が思想的にも現実的にも選べることが当然とされているが数十年前まではそんなことを考えることすら珍しく、もしくは罪とされていたことが物語の中でよく分かります。

それというのも、決して悪人や罪人として描かれているわけではない瞳子の母親は、人工呼吸を人前でされた瞳子を傷ものとして扱い、夫に先立たれた義母は、女は主人が死んだときに一度人生が終わると意気消沈します。

瞳子の母親などは、むしろ娘を思ってこその言動だったりするのでいかに嫁にいくのが女の幸せという思想が根を張っていたかということが分かります。

当の娘・瞳子は母を憎まないまでも理解できず、嫁ぎ先でも一人前扱いされず、生家の娘ですらすでにない自分は何なのだと思い悩みます。

しかしこのヒロインは解き放たれたい自由になりたいという気持ちを抱えつつも、ワガママに育った義妹や夫に先立たれて気落ちする義母を放ってはおけないと一人現実と向き合って強く前へ前へと進んでいきます。

個人的にはワガママ娘和音ちゃんをボコボコにしちゃった後、兵隊さんに絶対勝てよというシーンがお気に入りです。

こんな人におすすめ♪

戦争の悲惨さや、男性に隷属して生きる女の幸せへの疑問など、現代の女性は見ていない世界をヒロイン瞳子とともに体験することが出来ます。

今あたりまえに人権や男女平等という言葉が使われますが、その言葉が通じない時代に瞳子のような女性が文字通り歯を食いしばって生きて切り開いてきてくれたから今があるのだということがよく分かります。

どんなに恵まれた時代だと言われても実際に生きる人間には悩みや迷いがあると思います。そんな先が見えないとふと考えてしまう人に読んで欲しいおススメの漫画です。



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