【本当にあった怖い話】あなたはこの恐怖に耐えられますか!?本当にあった超怖い実話全30話

怖い話

それでは本当にあった怖い話どうぞ………

Sさんの子どもは二人。上が息子さんで、下は娘さんだ。
息子さんはようやく今年の春に幼稚園に通い始め、娘さんはまだ3歳。
新築の家を購入する時に二人の子ども部屋は作ったものの、今のところ使用されたことは無い。眠るとき、一人になることを子どもたちが嫌がり、結局夫婦の寝室に布団を並べて家族皆で眠っている。

その日も、Sさんはいつものように子どもたちと並んで布団で眠っていた。

ふと、扉が開く音で目が醒めたのだという。
Sさんは体を横たえたまま、首だけ起こして扉を見た。リビングで夜更かしをしていた夫が寝室に来たのだと思ったのだ。

だが。
薄く開いた扉から覗く姿は、やけに小さい。
廊下の間接照明を背後から受け、その姿は暗く沈んで、ぼんやりと立ち上る陽炎のように見えたと言う。

「〇ちゃん?」
Sさんはその小さな体から、てっきり自分の娘だと思った。
気付かずに一人でトイレに行き、戻って来たのだろう、と。

「えらいね。こっちにおいで」
そう言って、Sさんは目を閉じ、再び枕に頭を埋めた。小柄な影が、室内に入ってくる気配があり、Sさんはわずかに掛け布団を持ち上げてやる。するり、とその小柄な体は迷い無く布団の中に忍び込んできた。Sさんは薄く目を開き、自分の布団に入って来たその子どもを見る。

そして。
思った。
何故、この子は、洋服を着ているのだ、と。

Sさんに背を向けて横たわるその小柄な体は、洗いざらしの白いブラウスと、スカートの肩紐らしいものが見えた。
顔は見えないが、肩口で切りそろえたような髪は、汚れてよれて、頭皮脂のせいで髪束ができている。その髪の隙間からうっすらと覗く首は、垢で汚れていた。全体的に、つん、と古い油のような匂いがしたという。
うちの子じゃない。
Sさんはそう思った。

うちの子は、今日もお風呂に入り、パジャマを着ているはずだ。
いや、そもそも。
大きいのだ。
布団にもぐりこんだこの子は、どう見ても、小学生ぐらいに見える。

Sさんはあわてて首をねじり、背後を見る。
そこには。
Sさんの娘さんが寝息を立てて眠っていた。

誰だ、これは。

そう思った瞬間。体が動かなくなった。
ゆっくりと。
ゆっくりと、向かいの子どもが、Sさんに向き合おうと寝返りを打ち始める。Sさんは目を瞑り、必死に思ったのだそうだ。

ごめんなさい、私はあなたのお母さんになれません。私の子はここにいる二人だけなんです。

そう念じ続け、そっと目を開くと。
その子どもは姿を消していたそうだ。

布団の中にもぐりこむことはその後なかったが、夜間の廊下やトイレでしばらく出会うことがあったらしい。

ただ、Sさん家が室内犬を飼い始めた途端。
この子どもは姿を消したと言う。

H君は高校生だ。
今時珍しく、携帯も持っていなければゲーム機も自宅に無い。
そんな彼がはまっているのは、「ラジオ」だった。
夜遅くまで起きてしていることと言えば、友達とのラインではなく、「ラジオを聞くこと」。学校の先生は「平成生まれなのに、昭和みたいだな」と苦笑するという。

そんな彼がある日。
深夜のラジオを布団の中で聴いていた。
テスト前だったこともあり、仰向けになって寝転がり、教科書を眺めて、ラジオはイヤホンで聴いていたらしい。目的の番組が終了し、さてもうそろそろ寝ようか、と寝転んだまま室内照明のリモコンに手を伸ばした。
だが、いつもある場所にリモコンが無い。
H君は溜息をつき、ごろんとうつ伏せに寝返ってリモコンを探そうとして。

ぎょっとした。

部屋の隅に、背広を着た太った男が膝を抱えて座っているのだ。

一瞬、泥棒だと思って、床に手を突いて上半身を起こす。拍子に、近くにあった室内照明のリモコンに手があたり、室内が暗くなる。しまった、と思って部屋の隅を見ると、背広の男がいない。
『……見間違いか?』
若干安堵して、Hくんは再度、リモコンを使って照明をつける。

「うわっ! いるしっ」
思わず声が漏れた。確かにいるのだ。
室内の隅で膝を抱えて蹲り、おっさんがH君を見ている。

立ち上がった瞬間に、今度はリモコンを踏んだ。また暗転。
すると。
おっさんの姿が消える。

H君は怖くなって、部屋を飛び出し、隣の兄の部屋のの扉を乱暴に叩いた。
「なんだよ」
不満顔で現れる兄にしがみつき、「電気をつけると、おっさんが現れる」と自分でもわけの分からない説明を必死にしたらしい。
「おっさんって」
兄は笑いながら、H君の部屋に入り、照明をつけた。

そこには。
もう、誰も居なかったと言う。

「幽霊って、普通、電気を消したら現れるんじゃないですか? なに、あのおっさん。とち狂ってんじゃねぇよ」
H君は不満そうに私にそう言った。

Tさんは、介護福祉士として病棟に勤務していた。
それまではデイサービスや老人保健施設に勤めていたのだが、たまたま求人雑誌に載っていたその病院の夜勤つき勤務は給料が良く、それで転職して来たのだ。

夜勤は老人保健施設で体験していたし、この病院の看護師は介護士に対してむやみやたらに命令をしたりしないので、「良い職場だな」と思ったそうだ。Tさんは、自分が男だから喜ばれているのかもしれない、とも思った。というのも、病室のテレビの修理や電球交換など、性が不得手だとおもうこともよく頼まれたからだ。
『福祉』の現場ならともかく、『医療』の現場では、医者が頂点で、その下に看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等がおり、介護福祉士はその末端だ。一昔前なら、「使い捨て」とまで言われ、酷使されていた。

だからこそ、覚悟をしてきたのだが……。
この病院は、とにかく入って来た人材を大切にした、という。
その様子に、Tさんは、若干拍子抜けしたが、給料が良くて待遇がいいなら文句は無い。Tさんは一生懸命働いたという。

ある日の夜勤での出来事だ。
その日は、頻繁にナースコールが鳴ったのだという。
Tさんのいる療養病棟は看護師1名と介護福祉士1名で、約40名を夜勤時はカバーする。入院患者のほとんどが高齢者だ。オムツ交換に、トイレ誘導、夜間の徘徊に、状態変化などが重なり、いつもは柔和な看護師も苛立ち始めた。

もちろんTさんもひっきりなしに鳴るナースコールにうんざりしていた。
呼ばれて病室に行っても、緊急性はほぼない。
「眠れないから眠剤が欲しい」、「家に帰りたい」、「息子を呼んでくれ」、「今何時?」など、ようするに、誰かと話したい、と言った内容がほとんどだった。
とにかくこの晩は、皆が不穏になったのだそうだ。

「〇〇さんは、詰め所にいていただきましょう」
看護師は詰め所で、Tさんにそう指示した。
〇〇さんは、歩行がおぼつかないのに病室を出て廊下を徘徊するなどの問題行動を何度も起こすため、Tさんは看護師の指示に従い、その患者さんを病室から車イスに乗せ、詰め所に向かった。
その途中。
もうひとり徘徊している高齢者を見つけ、Tさんはその人の手も掴み、言ったのだそうだ。
「眠れないんなら、詰め所に一緒にいますか?」
高齢者は黙って頷き、付いて来たらしい。

詰め所に戻ると、看護師の姿は無かった。
ナースコールが点滅しているところを見ると、どこかの病室を確認しに行ったようだ。
「〇〇さん、ここにしばらくいましょう」
Tさんは声をかけ、もう一人の高齢者には椅子を勧めた。
Tさんが記録を取ろうとし始めた時、またナースコールが鳴る。
舌打ちしたいのを堪え、病室に行って状況確認。寝かせて詰め所に戻ると、今度は〇〇さんが、車イスを自分で動かして詰め所から廊下に彷徨い出ていた。
「ちょっとっ!」
〇〇さんを追いかけ、呼びかけたときだ。

「あの……」
声を、かけられた。

Tさんは「はい?」と思わず語調をきつくして振り返る。
そこにいたのは、詰め所の椅子に座ってもらっていたはずのあの高齢者だ。
『なんで、二人ともじっとしてられないんだ』
内心の苛立ちを噛み潰し、その利用者の名前を呼んで詰め所に戻ってもらおうとした。

そして、気付いたのだ。

これは、誰だ?

いくらまだ勤務して数ヶ月しか経っていないとはいえ、利用者の顔と名前ぐらいは覚えている。
だが。
廊下の落とされた照明にぼやり、と浮かぶその高齢者の顔を、いくら見ても思い出せない。
名前、病歴、状態、家族。
わからない。
これは。
誰だ。

「あの……」
高齢者は、困ったような声を出して、Tさんに手を伸ばした。その手は、Tさんを掴もうとしているようだ。
逃げたいのに、体が竦んだように動かない。

「たすけて」
高齢者はそう言った。

その時。
詰め所からナースコールが鳴る。
途端に、肩が震え、それが全身に広がるようにして体が動き始めた。
自分に向かって伸ばされた手を振り払い、Tさんは思わず怒鳴った。

「すいません! 生きてる人、優先なんです!」

そう言って、〇〇さんの車イスのハンドルを掴み、高齢者に背を向けて一目散に詰め所に戻った。
とにかく〇〇さんを詰め所に入れ、そっと顔だけ覗かせてTさんは廊下の暗がりを見た。
そこにはもう。
人影はなかったという。

その後、詰め所に戻って来た看護師にその話をすると、小さく肩を竦めてTさんに言った。
「出るのよ、ここ。でも辞めないで。夜勤の人数がいなくなっちゃう」

幽霊の話ではないが。

近所のおじいちゃんのお話をひとつ。

このおじいちゃんが、まだ子どもだった頃のことだ。
当時は子どもといえど、地域において「役割」があったようだ。
年長者が年少者をまとめ、その年長者が大人とやり取りをして「役割」を果たす。
いまでも私の地区の子供会はかなり自治会と密接で、いろんな行事があるが、昔は更に多かった。

その子どもたちの「役割」のひとつに。

「さんまいさん」の火の番があった。
「さんまいさん」とは、このあたりの方言で「墓地」のことを指す。

当時、村には火葬場が無く、遺体は村の「さんまいさん」で自治会員によって焼いていたのだそうだ。
火葬場のような高温が出せるわけではないので、遺体を木々で覆い、骨になるまでひたすら焼き続ける。
子どもたちは、その間、長い竹を持たされて「さんまいさん」で待機だ。

なんのためか。
それは、延焼を防ぐため。
遺体を墓地の空き地で燃やし続けるため、枯れ草を伝って火が地面を伸びていくのだ。
それを防ぐため、竹の棒で地面を叩いて火を消す。

そしてもう一つ。

「仏さんが、立ち上がるんや」
おじいちゃんは、にやりと笑ってそう私に教えてくれた。

焼いている最中に、足裏を地面につけて直立不動の姿勢のまま、本当に遺体が立ち上がるのだそうだ。

理由は知らない。
ただ、結構な頻度で、炎に包まれた遺体が立ち上がるという。
その遺体を。
子どもたちは、竹の棒で叩いて寝かせるのだという。

「最初見た時は、ほんま、びっくりするで」
おじいちゃんは、かんらかんら、と笑いながら教えてくれた。

幽霊話ではないけれど。
私は夜の墓地の漆黒の闇の中、炎を纏った遺体が立ち上がるそのさまを想像して、ぞっとする。

第5話 ものが溜まってどうにもならん

Cさんはある日、夢を見た。
夢を見ているときは、これが夢だ、という自覚はなかったのだそうだ。

夢の中でリビングに居ると玄関チャイムが鳴り、自治会の役員さんが訪問してきたらしい。
「申し訳ないが、ちょっと手伝ってくれないだろうか」
役員さんはそう言ったという。実際、Cさんの住んでいる地区は「年通り」と呼ばれるぐらい高齢化が進んでおり、力仕事や厄介ごとがあれば、役員さんが時折すまなそうな顔で訪問してくる。
Cさんは平日、フルタイムで働いているが、休日や自分の空いている時間であれば、いつでも手伝いを惜しまなかった。
この日も、「いいですよ」と返事をして、家を出たのだという。
Cさんは、役員さんと並んで道を歩きながら、「なんの手伝いですか?」と尋ねた。

「ものが溜まってね。どうにもならんのですよ」
役員さんの言葉に、Cさんは頷く。そういえば、回覧板で、ゴミの不法投棄が増えている、と書いてあったような気がした。道路に面したごみ収集場に、自治会員以外の人がゴミを捨てていくのだ。

その、ゴミ掃除だろうか。
そう思ってついて歩いていた時。
ふと、気付く。

この道は、△さんの家に続く道だ、と。

△さんの家では、つい最近奥様がお亡くなりになったのだ。
若かったことと、お子さんがまだ小さかったこともあり、Cさんも△さんの奥様の葬儀に参加した時は、涙が堪えられなかった。

その家に。
皆は向かっていた。

「あの……。どこに行くんですか?」
Cさんはなんだか不安になって、前を歩く役員に声をかけた。

「溜まるんですよ」
役員はぐるりと振り返り、Cさんに向けて、ひとことそう言った。
その目に眼球は無く、眼窩が洞のように空いている。
その、暗さに。その、深さに。その、洞に巣食う闇に驚いて。

そこで、Cさんは目が醒めたのだという。
目を開くと、自分の寝室だった。
ベッドの隣りには夫が眠っている。
どきどきと心臓は拍動し、Cさんは怖くなって隣りの夫に声をかけようとした。

「いま、怖い夢を見たの」
そう、言おうとした。
ところが。
体が動かない。
夫を呼びかけようとしたが。
声も出ない。
必死に腹筋に力を入れるけれど、喉からもれるのは、呻いたような声だった。

「溜まるんですよ」
ふと、声が聞こえ、足元を見る。
そこには、人影があった。

「溜まるんですよ」
そう言うと、その人影は足元の「黒い何か」を掴み、どんどんCさんの腹に向かって投げつけてきたのだという。
その「黒い何か」は、粘着的な動きでCさんの体に張り付き、どんどん溜まっていくのだと言う。
『苦しい、苦しい』
Cさんは必死にもがこうとするものの、重みで身動きがとれない。
息苦しさと重みとで小恐慌状態に陥ったときだ。

夫が、寝返りを打った。

その拍子に、夫の腕がCさんの腹の上に乗る。

どん、と。
本当に室内を揺るがすような衝突音が鳴り、Cさんにへばりついていたその「黒い何か」が剥がれ落ち、霧散した。

咄嗟に、Cさんは上半身を起こし、大きく息を吐く。

寝室の足元にも。
それどころか、部屋のどこにも。
人影も、「黒い何か」もなかった。

Cさんは夫を揺り起こし、思わず礼を言ったのだそうだ。

「いつもは寝相が悪くて腹がたつけど……。あの時は助かった」
Cさんは安堵したように私にそう言った。

Kさんが、高校生の時の話だ。

Kさんは、とある同好会に所属していた。
その日もメンバーたちと同好会室に集まり、いつも通り過ごしていたという。

ところで。
このKさんの所属する同好会の同好会室は、創立以来80年以上使用されている木造校舎の東館にあった。当時は他にも木造校舎がいくつか残っていたという。

「そろそろ帰ろうか」
誰ともなくそう言い出した。ふと、窓から外を眺めると、他部の気配もない。時計を確認すると、下校時刻を過ぎていた。
「僕が同好会室の戸締りをするよ。先にみんな、東館を出てくれ」
Kさんが申し出ると、皆は口々に「お先」「じゃあ、よろしく」と言って同好会室を出た。
Kさんも電気を消し、廊下に出る。

廊下は、随分と薄暗い。
この時刻、廊下に忍び込むのはすでに夕陽ではなく、薄闇だった。二学期が始まり、季節は秋から冬に移行しつつあるこの時期は、日暮れも早い。
Kさんは目を凝らしながら、鍵穴に鍵を差し込んだ。

その時、ふと。
目が、『色』を捕えた。
何もかもが薄墨色に染まる廊下の中で。
Kさんの視覚が捕えたのは。
『白』だった。

すぐに、制服のカッターシャツだと気づく。施錠をしながらも、ちらりと目に入り込んだ校章の色は同級生のそれだった。
『この身長からすると……。A君かな』
Kさんはがちゃりと鍵を回しながら、苦笑する。律儀だな。待っててくれてるのか。Kさんは鍵を抜き取り、施錠を確認した後、笑顔で振り返った。

「A君、お待たせ。帰ろうか」
だが。
そこには、誰もいなかった。

「……あれ?」
思わずKさんは呟き、周囲を見回した。

いた、はずだ。
確かに視線も感じたし、なにより白い半袖カッターシャツを見た。
自分の目には。
彼の『白』と『校章の色』が残像のように焼き付いている。

Kさんは首をひねりながらも、鍵を学ランのポケットに滑り込ませ、東館出口に向かった。

「お疲れ」「ありがとうな」
東館からKさんが出ると、同好会の皆がそう声をかけてくれた。
顔を捩じり、Kさんは皆を見る。

薄暗い中、学ランを着込んだ皆は黒く、そこだけ闇が濃くなったように見えていた。
そこには。
A君もいる。

「A君、戸締りに付き合ってくれてありがとう」
Kさんは皆に足早に近づき、礼を口にする。だが、A君どころか皆が怪訝そうにKさんを見返した。
「Aはずっと、ここにいたけど?」
「え……? そしたら、誰が僕の側にいたんだ?」
Kさんの質問に、皆が顔を見合わせる。

そして、ようやく。
Kさんは気づく。

自分を含め、皆、学ランを着ているのだ。
冬服じゃないか、と。
今、季節は秋から冬に向おうとしている。

何故自分は。
自分の目は。
『白』を捕えたのだ?
何故、自分の背後にいた生徒は、半袖カッターシャツの「夏服」を着ていたのだ、と。

「そう言えば、今日さ」
誰かがぽつり、と尋ねた。
「俺達、何人で同好会室に居たっけ……」
「何人って……。ここにいる皆だろ?」
A君が答える。皆はそれぞれに頷きながらも、「そう言われれば」と、首をかしげていた。

「なんか、今。人数が少なくないか?」

Kさんの口をついて出た言葉に、皆は一斉に頷いた。
「誰か、足りねぇよな」「人がいる気配はあったんだよ。同好会室に」「なんだよ。誰か東館に残ってんじゃねぇのか?」
ぼそぼそと小声で皆は言い合う。
言い合うが。
再び東館の同好会室に確認に戻ろうとする生徒はいなかった。

その後も、なんとなく東館で人がいる気配は感じていたものの。
姿を見たのは、その日だけだったという。

第7話みみずうどん

第7話 都市伝説 みみずうどん

都市伝説の『みみずうどん』をご存知だろうか。
私は、ネットで知る前から、母に聞かされた話だった。
母は、自分が小さな頃、誰かから聞いた話らしい。

ご存じない方に内容を少し説明する。
あるところに盲目の高齢者が居る(男は曖昧)。その盲目の高齢者は、こども夫婦の世話になっている(このこどもも、男は曖昧)。盲目であるため、こども夫婦は虐待じみたことをし始める。
目が見えないことをいいことに、だし汁の中にみみずを入れて、「うどんだ」と言って食べさせるのだ。その食べている様子を見て、馬鹿にする、という話なのだが……。(中には、戦時中どうしてもうどんを食べさせたくて、みみずをうどんと偽って食べさせた、という話もあるようだ)

ところで。
母が聞いたのは、こんな話だった。
(真偽の程は定かではない。母も子どもの頃、聞いたと言っていた)

当時、母が住んでいた近隣での出来事らしい。
ある、夫婦が住んでいた。

身内らしい目の不自由なおばあさんと一緒に暮らしていたのだが、誰が見ても、そのおばあさんは、若夫婦に虐げられていたらしい。それこそ、「みみずうどんを食べさせられているのではないか」と噂されるほどに。
『……かわいそうに』
誰もがそう思っていた。

そんなある日、このおばあさんが亡くなった。
夫婦は、「これでようやく二人だけでゆっくり暮らせる」と近所に言っていたらしい。

ところが。

この夫婦。
どんどん、家に閉じこもり始めたのだそうだ。

近所づきあいを避け、外出をやめ、終いには雨戸をキッチリと閉めて閉じこもってしまった。

流石に近所でも噂になり、数人の有志がこの夫婦のお宅に訪問したときのことだ。

玄関チャイムを鳴らすが返答は無い。ただ、家の中から様子を伺う気配は伝わってきた。有志たちは「□□さん」と名前を何度も呼んで、扉を叩く。

「大丈夫ですか? 何かあったんですか?」
「大丈夫です。何もありません」
家の中からは押し殺したような夫婦の声が聞こえた。
「大丈夫って……。じゃあ、このドアを開けて顔を見せてくださいよ」
困惑して有志の一人がそう言うと、「開けないでっ!」と叫び声が聞こえてくる。

「絶対に開けないで! 覗かれるっ!」
「……覗く?」
有志たちは顔を見合わせ、首を傾げた。
夫婦の家は玄関も開かず、一階の雨戸どころか二階の雨戸までもきっちりと閉められている。実は玄関が開かないものだから、どこからか入れないだろうか、と家の周辺を有志たちは巡ってみたのだが、どこの窓もクレッセント錠がかけられて入れない。

覗く、とは。なんだ。
誰が、何を、覗くのだ。

結局この日は玄関が開くことは無く、有志たちは夫婦の家を後にした。

その後。
心配した親族が強引にこの家に押し入ったのだが。

夫婦は、二人で抱き合って押入れの中にいたのだそうだ。

親族は、家の中の様子にも驚いたという。
窓という窓、扉という扉が閉められ、中から目張りがされていた。
どの扉もみっちりと閉められていたため、当初どこにその夫婦がいるのかわからなかった。
親族はガムテープでふさがれた目張りを剥がして部屋を一つずつ確認し、そして押入れの中にいる二人を見つけたのだそうだ。

「覗かれる! 扉の隙間から覗かれる!」
夫婦は二人とも恐慌状態でそう叫び続けたと言う。

先日、この話を掲載するに当たり、母に確認を取ったのだが、「もう、昔の話やし、細かいことは忘れたわ。そんな話やったかなぁ」と首を傾げていた。
こちらとしては、幼い頃に、こんな強烈な話を聞かされたのでやけに印象に残っているのだが、当の本人は、私の話を「へぇ」と驚いて聞いたりしていたので呆れた。

最後に母は。
「『怖いもん』が覗いとったって……。でも、『怖いもん』にしたのは、その夫婦やろうになぁ」
母はそう言った。

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