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作家・円城塔の『文字渦』この書籍の感想・レビュー・批評をお願いします。

  1. 匿名 より:

    「文字渦」:円城塔/著 1,980円(税込) 発売日:2018/07/31

    昔は文字は本当に生きていたのだと思わないかい?第43回川端康成文学賞受賞作、文字に関するSF連作。真顔で滅茶苦茶なことを言ってくる実験作で面白い。表題作『文字渦』の、気づいたときにあってなる瞬間とか、『緑字』の宇宙の広がりとか、『誤字』の問題の箇所に差し掛かった瞬間の破壊力とか、よくできています。文字にまつわる12編を収めた短編集です。『自分が書く日本語の文字って何なのだろう』と気になり始めて、フィクションの連作にしながら考えてみた」のだと著者はいいます。文字で闘う、文字が発光する、ルビが語り出す各編が遊び心にあふれながら知性的な書きぶりで、文字の起源や可能性を探っているのです「文字小説」と出版元は言い、「文字ファンタジー」と作者は言うのです。小説は文字でつづられますが、文字を小説のテーマにすると見たことのない本になりました。円城塔さんの『文字渦(もじか)』(新潮社)は古代、漢字の起こりから未来、文字のあの世まで12編。時に光り、時に動き、語り出す文字。日本語の海にダイブして、とことんたわむれる連作短編集です。始皇帝の陵墓から未知の漢字を記した竹簡が発見されました。その3万字すべてが「人」の形を含んでいるのです。物語は2千年さかのぼり、陶工が大量の兵馬俑(へいばよう)を区別するために独自の文字を作ろうとする。彼は皇帝に呼び出される。名は●(えい、羸の「羊」の部分が「女」)。皇帝像を作れと命じた●は、羸、◎(羸の「羊」の部分が「虫」)、と姿を変え、陶工はその正体をとらえられない。驚くことにこれらの漢字はすべて存在するのです。「ユニコードになくても、大漢和辞典にあります」。文字の規格であるユニコードをまとめた本をめくりながら「グリフウィキ」「超漢字検索」といった検索サイトを歩き回ったそうです。希少言語を求めて世界を旅する「わたし」が文字同士を闘わせる遊技に参加する「闘字」の後では、見慣れない漢字が虫のように見えてくるのです。「源氏物語」の「御法(みのり)」を写す機械が筆写に思い入れるあまり涙を流して筆を乱す「梅枝」は物語性が豊かです。文字が図形のように空に浮かぶ「天書」や、ルビが本文を横取りしていく「誤字」は、この紹介文ですら意味不明でしょう。わからなくてもいいですか。「自分でも何を書いているかわからないことがよくあります」『これはペンです』(新潮文庫)や『道化師の蝶(ちょう)』(芥川賞受賞作、講談社文庫)など、文字や言語に思いを巡らす作品が多いです。文字へのこだわりは「人並みに」とかわされますが、「小学生の頃、自分で文字を作ったりするじゃないですか」と続けるところは相当な文字好きでしょう。ひらがなを記号にしたり、自分しか読めない漢字で暗号を作ったり。「書いてみるけど自分にも読めなくなる。自分で文字を作ることに失敗して、なぜだめなんだろう、なぜ、と思うんです」2015年の『プロローグ』(文春文庫)は文字コードを思考する長編で、今作は文字コードを具体的に扱うステップアップ、とも言われます。「文字を見て思ったことを書いている。ユニコードに縛られず、変な漢字を小説に入れたらどうなるか」という実験だそうです。同じ頃「雨月物語」の現代語訳(『日本文学全集11巻』、河出書房新社)も文字への思いを強くしました。「江戸期の和本が読めないことに衝撃を受けました」。漢字でつづった『古事記』『万葉集』から、かなを使った『土佐日記』で漢字かな交じりへ。「先祖が書いていたものが読めないと昔の人はぼやいていたけど、まさに自分もそう、そういう文字に対する危機感、読めなくなるというハラハラ感がなくなってませんか」。タイトルは中島敦の『文字禍』を一文字変えて、長すぎるルビのために禁則処理は複雑極まり、使う漢字も難解すぎて編集者に伝えるためにスクリーンショットを送りました。「紙の本にしかできないことを」という思いは結実しているのですが、「電子書籍でどこまで表示できるか。たぶんコントロールできません」。予想外の出来事も含めて、文字は渦巻く。「▲(「予」を逆さにした字)」の文字が池から突き出す「幻字」は、登場する人物が文字なのです。あの名作もこの人の手にかかると「殺字事件」になるのです。冗談めいた語りにふいに、多く残された文字が正しいのか、正しさに固執することはない、と本質的な問いが挿入されるのです。12の短編にはどれも「正しさ」への疑問が流れています。「学校教育でとめろ、はねろ、気にしなくていいと言ってきましたが、そもそも草書と行書では書き順から違う」。堅苦しさが気になるのです。「漢字って変ですよ。多すぎるし、いくつあるのかわからないなんて、漢字仮名交じりだっておかしい。漢字を開いても閉じてもいい、気持ち次第。句読点の打ち方もルビの振り方もルールはないのです。変なの、と思います。書記体系がおかしいでしょう」。変でしょ、と話しているときが、一番うれしひと時です。



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