東京都のアニメ制作会社「A―1 Pictures」に勤め、辞めた後の2010年10月に自殺した男性=当時(28)=について、まとめました。そして、アニメ制作に携わっている人々の悲痛な現状も付け加えました。
東京都のアニメ制作会社「A―1 Pictures」に勤め、辞めた後の2010年10月に自殺した男性=当時(28)=について、新宿労働基準監督署が過労によるうつ病が原因として労災認定したことが18日、分かった。遺族側代理人の和泉貴士弁護士が明らかにした。認定は11日付。
和泉弁護士によると、男性は正社員として06年から09年12月まで勤務。会社にタイムカードで労働時間を管理する仕組みはなかったが、通院した医療施設のカルテには「月600時間労働」との記載があった。
和泉弁護士は「家に帰れないこともしばしばで、残業代が支払われた形跡もない」と指摘。7日連続で会社に泊まったり、3か月間休みがなかったりしたこともあったとしている。
一方、弁護側は男性が残した会員制交流サイトの日記などから発症時期を08年12月ごろと推定。男性が在職中に控えた記録では、それまでの半年の残業時間は月134時間から、多い時で344時間に上ったという。
男性は作画を担当者に依頼したり、完成品を受け取ったりする「制作進行」と呼ばれる現場の調整役を務めていた。人気アニメ「おおきく振りかぶって」「かんなぎ」などに携わった。
体調を崩したことや関連会社への異動を断られたことから退職。10年10月に東京都内の自宅アパートで死亡しているのが見つかった。
【twitterでの反応】
月600時間労働の文字がTLで流れてますが、どう行動すれば可能なのかサッパリ分からない。1日20時間働いて30日とすると1日で働いて無いのは4時間。何回かの徹夜で考えてもそれ程休む時間取れない。会社に「いた」時間ならあり得るけど「働いた」時間なら効率悪すぎて使いものにならない。
1ヶ月は720時間‥。 / アニメ制作会社勤務 20代男性の過労自殺認定 カルテに「月600時間」 gunosy.com/g/g6xrb
【アニメ制作現場の悲痛な現状】
アニメ制作の関係者とみられる人たちは、「月に300時間や400時間の労働なんて、アニメ業界では当たり前。600時間も十分あり得る」「追い込み時期は土日もなしで毎日3~4時間睡眠」などと業界の実態を暴露。リアリティーたっぷりの発言に「これが世界に誇るアニメの現実か」「恐ろしすぎる」「業界の構造を変えないとダメだ」などのコメントが相次いだ。
「アニメの絵の根幹をなす『原画』は1枚描いて3000円から4000円。下請け制作会社からの発注だと2000円になることもあります。そして原画のキャラやメカを動かす『動画』は1枚描いて150円から200円。絵がうまいことはもちろん、描くのが速くないとまったく稼げない世界なんです」
1日1枚の動画しか描けなければ日給150円ということもあり得るわけだ。
「僕も最初の頃は毎晩のように徹夜をしていたけど、月給1万円にも届きませんでした。数ヵ月後にやっと3万円くらい稼げるようになり、月給10万円を突破するのに2年かかりました。一日中拘束される日も珍しくないのに、スズメの涙ほどの給料しかもらえない。僕の場合、学生時代から付き合っていた女性と同棲していたのでなんとかなりましたが、ひとり暮らしをしている新人アニメーターの多くは親から仕送りをもらわないとやっていけない。仕送りが切られた人間から順に辞めていくようなものです」(P氏)
作業スピードには差があるものの、かなり頑張っても時給にしてわずか数百円程度しか稼げない人もいます。中には月に1日や2日しか休まずに、合計400時間ほど働く人もいるようです。
しかし、このような生活を続けていたら体が持たないので、単価の高い「原画」を任されるようになるまでは、実家で暮らしている人も少なくありません。
【ゲームや漫画業界にも・・・】
アニメのほかに過酷だと指摘された業界の中で、特に目立ったのは、ゲームや漫画、スマートフォンなどのプログラム制作だった。
こちらも「ゲーム制作は地獄だった。会社に1週間泊まり込みで仮眠は固い床で1時間。ふっと電車に飛び込みそうになった」「体を壊してやめていくのはザラ。1週間寝れなくて血吐いたり20代後半で突然死した人もいた」などと、アニメ業界同様に厳しい勤務実態の報告が続出。
これらを受けて、「犠牲の上に成り立ってる業界が多いんだな」「日本のクリエーティブ系の職種って、どこも似たり寄ったり」「異常労働が、これほど広く常態化しているとは」などと憤りも交えた声が多く書き込まれる中、「労働が過酷な業界はどれもみんな、日本が世界に積極的に発信しているクールジャパンに関連したものばかりじゃないか」と指摘する人も登場。