オムツをめぐり、あるルールが物議をかもしています。保育所などで使い終わったオムツを、保護者が全て持ち帰るというルールです。
保護者からも保育士からも不満の声があがり、小児科の医師は、「感染症を広げるリスクがある」と指摘します。
大阪府熊取町にある「町立中央保育所」。子どもたちがトイレの順番を待っていますが、手にするのは…「オムツ」。
こちらの保育所では、オムツを各家庭が用意し、使い終わったものは、保育士がそれぞれの子ども専用のゴミ箱に入れていきます。そして、迎えに来た保護者が、使用済おむつをゴミ箱から取り出し、持参したバックに詰めて持って帰っているのです。
この「オムツ持ち帰りルール」に保護者は…
【保護者】
「病院に寄ったりとかすることもあるけど、袋の中に置きっぱなしがすごく嫌で、夏場とかすごく匂いとかする」
「(家の)ゴミ箱が満タンになるので、袋が何個もいったりしてそれが結構、困ってます」
そして、保育士は…
【保育士】
「これが当たり前なんかなと思ってやってきました」
「間違ってはいけないってのもありますし、結構、大変やったな、人数が多い分、仕分けがとにかく大変でした」
保護者からも保育士からも不評のようですが、オムツの定額利用サービスなどを行う「BABYJOB」の調査では、滋賀では89%、京都は73%、大阪は56%の自治体が「オムツの持ち帰り」をお願いしているのが現状です。
なぜこのようななルールがあるのか。熊取町の担当者に聞きました。
【熊取町保育課 藤本明課長】
「昔からの保育所の伝統的な考え方があるのと、保育所の時の排せつを、どんな様子やったのかを確かめてもらいたいということでずっと長年続いてきたと聞いております」
調査によると持ち帰りの理由は、「保護者に便で体調確認をしてもらう」が最も多く、「ずっとこうしてきた理由はわからない」「ゴミの保管、回収に問題がある」などがありました。
【保護者】
ーーQ:家に帰っておむつを開けて健康状態を見ることは?
「いや、まったく…」
「便がゆるかったり、ちょっと硬いっていうのは先生から口頭で話を…そのつど先生もチェックしていただいているので、チェックはしないですね」
また、小児科の医師は、持ち帰りは「感染症を広げるリスクがある」と指摘します。
【大阪母子医療センター 恵谷ゆり主任部長】
「ノロとかロタとかほんの少しのウイルスで数十個単位でも感染すると言われているので、感染するかもしれない下痢便を家で触るっていうのは、家庭内に感染を広げるリスク以外の何ものでもない。下痢があったら下痢でしたってことを園の保育士さんから伝えてもらえばいいことであって、むしろ危険な行為だと思いますね」
保護者から「保育所で処分してほしい」との声が寄せられた熊取町では、新型コロナの感染対策という観点からも「オムツ持ち帰りルール」を2日から廃止することに踏み切りました。
2日朝、保育所には新たにおむつを捨てるゴミ箱が設置されました。
【保育士】
「全部このゴミ箱に捨てれるってことで。作業の時間は短縮になる。その分子供と関わってズボンはいたりパンツはいたりする時間しっかりとれるのかなって」
便の状態など、体調に変化があった場合は、これまで通りノートに書いたり、お迎えの時間に保護者に伝えていきます。
ゴミ箱などの初期投資に100万円、そのほか処理代などで毎月数万円の費用がかかるということですが、熊取町は大きな負担ではないとしています。
【保護者】
「めっちゃ楽になりました。袋セットしたり持って帰ってっていうのが手間は手間だったので」
近畿では、去年から今年にかけ、23の自治体が持ち帰りを見直しています。廃棄にかかる費用は、2019年に見直した大阪市の場合、55カ所の公立保育所で、年間550万から560万円程度となっています。
まだ「持ち帰りルール」を見直していない自治体に、その理由を聞きました。
堺市は、「布オムツからの名残で、オムツの重さからおしっこの量などを把握し、体調管理につなげて欲しい」と回答しています。
また京都市は、「オムツ処理に税金を使うとなると、民間との不平等が生じる」と回答しています。
カンテレ「報道ランナー」2022年5月2日放送
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