5月15日に実施された司法試験予備試験。その概要や、法科大学院・司法試験との違い、合格率などの最新データ、そして指摘されている問題点をわかりやすくまとめました。
現在、弁護士・裁判官・検察官(法曹三者)になるためには司法試験に合格することが必要です。司法試験には受験資格があり、法科大学院を修了もしくは予備試験に合格することです。
つまり、司法試験を受験するには、法科大学院を修了する「法科大学院ルート」と、予備試験に合格する「予備試験ルート」の2つのルートがあるのです。これを頭に入れて読み進めてください。
司法試験に合格すると、司法修習を経た後、法曹として働くことができます。
司法試験に合格した後、さらに1年間の「司法修習(無給の職業訓練)」を経て、司法修習の修了試験「二回試験」に合格すると、ようやく仕事に就くことができます。
「予備試験ルート」のメリット① 時間とお金の節約
予備試験は、法科大学院に進学しなくても、その合格によって司法試験受験資格を得られる試験です。
法科大学院の入学試験資格は「大学卒業」の上、法科大学院を修了するには最低2年かかりますので、予備試験で合格すれば圧倒的に早く仕事を始められます。
予備試験ルートであれば、経済的・時間的コストを大幅にカットして法律家になることが可能です。
法科大学院の学費は全額免除されることもありますが、上述の通り時間的コストはケタ違いです。特に、大学1~3年生や社会人で司法試験を目指す方には大きなメリットとなります。
「予備試験ルート」のメリット② 司法試験に合格しやすい
予備試験の短答式試験は、司法試験と問題の8割が共通しているため、その対策がそのまま司法試験短答式試験の対策になります。
短答式限定の話ですが、予備試験と司法試験は同日同時刻に実施される都合上、問題の大半が重複しています。そのため、予備試験対策をすれば自ずと司法試験対策をすることにもなるのです。
平成27年司法試験、合格率トップは「予備試験合格者」61.8%
法科大学院ルート総計の司法試験合格率が23.1%(平成27年度)ですから、予備試験ルートの司法試験合格率はその3倍弱ということになります。
法律事務所の採用担当者からは、「予備試験ルートからの合格者を採用したい」との声が多数あがっています。
実際に、大手法律事務所では予備試験ルート合格者が多数採用されています。
悪いことは言わない。法科大学院ルートをとる前に、予備試験ルートを試せ。それから法科大学院ルートをとることになっても、決して遅くはない。
予備試験の流れと試験科目は?
予備試験は、5月に短答式試験、7月に論文式試験、10月に口述式試験が行われ、それぞれの試験を順次突破していくという段階式の選抜方法を取っています。
3つの試験の合計点ではなく、1つずつ、すべての試験に合格しなければなりません。
試験科目はこちらのページをご覧ください。ざっくりいえば、憲法、民法、刑法、商法、民訴法、刑訴法、行政法+αです。
予備試験の最終合格率は、これまでずっと4%未満!
平成26年度の短答式の合格率は約19.5%
論文式の合格率は、平成23年度は約9.5%、平成24年度は約14%、平成25年度は約19.8%、そして平成26年度は約20.5%
口述式の合格率は、平成26年度は91%
平成26年度の最終合格率は 3.46% です。ちなみに平成27年度は 3.85% でした。
平成26年度 10,295→2,018→392→356(3.46%)
平成27年度 10,246→2,294→428→394(3.85%)
平成28年度 10,379→2,426→429→405(3.90%)
平成29年度 10,665→2,299→469→???
左から、採点対象者数→短答合格者数→論文合格者数→最終合格者数(最終合格率:%)
予備試験に合格しているのはどんな人?
予備試験受験者① 現役大学生
大学学部生の受験者のシェアは28.1%、合格者のシェアは39.6%
学部生受験者数は年々増加し、平成27年は2907人が受験、138人が合格しています。
「3年生で予備試験合格→4年生で司法試験合格」というルートは「エリートコース」「黄金ルート」などと呼ばれているようです。毎年約50人の学部生がこのエリートコースを歩んでいます。
予備試験受験者② 現役法科大学院生
法科大学院生の受験者のシェアは16.9%、合格者のシェアは35.0%
法科大学院は修了まで最低2年。修了より1年でも早く司法試験に合格するために、1747人の法科大学院生が予備試験を受験しています。既に法科大学院に合格された方々なので合格率は高めです。
予備試験受験者③ 社会人など
もし仕事を辞めて法科大学院に進学する場合には、何年間も無職の状態となるので、相当のリスクを覚悟することになる。
社会人が司法試験を目指すのならば、学生以上に時間と費用が大事になってきます。そのため、社会人の方は基本的に予備試験ルートを目指しているようです。
無職の受験者のシェアは21.6%、合格者のシェアは8.9%
学部生、法科大学院生、社会人以外では、無職や法科大学院以外大学院生などが受験しています。
司法試験に対する予備試験の受験者数・合格者数は年々増加しており、予備試験ルートが主流になりつつある
法務省による最終結果報告値。平成27年度試験の受験者・合格者の属性や年齢別分布があります。
ときどき予備試験が新聞等で取り沙汰されるのはなぜ?
予備試験制度を設立した目的は、経済的な事情などにより大学や法科大学院に通えない社会人を対象として、司法試験に導くためだった。しかし、もはや司法試験への受験資格を得られる抜け道として考えられるようになっている。
これまで述べてきたように、予備試験ルートで司法試験に合格するメリットが非常に大きいため、社会人に限らずあらゆる属性の人が予備試験合格を目指しているのが現状です。これは、国の当初の目論見とは大きく異なっているということです。
司法試験への「抜け道」とは、法科大学院ルートのほうですよ。受験資格をカネと時間で買えるルートが法科大学院なのですから。
予備試験ではなく、法科大学院の方を問題視する声も多く挙がっています。
現在の予備試験は建前上誰でも受験できる試験とされているものの、実態は東大法学部生かその出身者のためにあるような試験です。
以上とはまったく別の問題点です。予備試験の短答式試験の一般教養科目は、設問の半数近くがセンター試験レベル以上の数学や理科なのです。「一般教養」といいながら常識のレベルを遙かに超えているため、社会人や大学受験で私大文系単願だった人にはかなり難しい問題ばかりです。
@k46708hikaru 予備試験の一般教養は、政治学、社会学などの学問レベルの問題が多いので、ある意味、難しいですね。