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【ラノベ】ライトノベルの定義を再考してみる【定義論】

ライトノベル

色々探しても明確な定義が無さそうなラノベ。上手い定義が出来ないものかと考えてみました。試みに、定義を提案してみます。ここでは基本的に辞書の記述をベースに考察していきます。

『ロードス島戦記』や『スレイヤーズ』あたりから始まったと言われるライトノベルも、今やかなり普及しています。

あらすじ:
暗黒皇帝ベルドに率いられたマーモ帝国軍と「至高神ファリス」[8]を奉じる神聖王国ヴァリスを中心とする国々との戦い(英雄戦争)を背景として進む。
アラニア王国出身の若き戦士パーンは、亡き父と同じ騎士になる夢を求めて5人の仲間と共に冒険の旅に出ていた。その途中、英雄戦争の狭間で暗躍する「灰色の魔女」カーラの陰謀(フィアンナ姫誘拐事件)に巻き込まれるも、フィアンナ姫の救出に成功し、自らの進むべき道を求めヴァリス王国に向かう。…
(wikipedia)

あらすじ:
旅の途中、リナがいつものように森で盗賊に絡まれているところを、通りすがったガウリイが成り行きで助ける。ガウリイは見た目がまだ頼りないリナの保護者をかって出、アトラス・シティまでの道筋を同行する。一行は途中、賢者の石を狙うゼルガディス、賢者として名高い赤法師レゾと対峙する。幾多の攻防の末ゼルガディスはレゾを裏切り、レゾは念願の賢者の石を手に入れるが、同時に魔王として覚醒する。リナたちは苦戦を強いられるものの、何とか覚醒したレゾを打ち破る。アトラス・シティ到着後、リナはガウリイの持つ伝説の武器「光の剣」に興味を示し、旅を共にするようになる。(wikipedia)

普通の小説とラノベの違いって何だろうと思うことがありますが、どうも調べてみても決着がついて無さそうです。

また、最近では、ライトノベルだけでなく、ヤングアダルト(YA)小説なんてもの出てきているようです。
ジュブナイルなんてものありますよね。

次の引用によると、これらの違いは対象とする年齢層によって区分されそうです。

しいて言うならヤングアダルトは「ジュブナイル」よりも上の年齢層の読物で、「ライトノベル」よりも、幅広い読者を想定しています。

ストーリー:
「僕」は一度死んだはずだが、天使に「抽選にあたりました!」と言われ、生まれ変わり「小林真」という中学生としてもう一度人生をやり直すチャンスを与えられる。そして、小林真として生活が始まるのだが、さまざまな困難が立ちはだかった。
(wikipedia)

なんにせよ、ヤングアダルトも然り、ライトノベルとかこういうあたりの定義が未だかなり曖昧なようで、どういう定義ができるのかということに興味を持ったので調べてみました。

同様に疑問を持つ人は少なからず居るようです。

ラノベの定義ってなんだろ??

ビブリア古書堂の事件手帖 ってライトノベル扱いになってるの?? まあ、面白いからいいんだけど(´・ω・`)。  ライトノベルの定義が中々理解できませぬ

久々にラノベ定義論が(お遊びでなく)本気で戦争の火種になりそうな気がしている。

「ライトノベルの定義は何だろうか?」

何か小説を挙げられたとき、「それがライトノベルであるかそうでないかを明確に分類できること」がやりたいことです。

まずは参考としてネットで調べてみます。

次に、辞書・辞典で調べ、基本的にはその記述をベースにして、ここでは考えていきたいと思います。(ネットだと、以外に辞書・辞典を調べていないように見える?)

だいたいの考えが纏まったところで例題を考えて、ここでの主張による分類がどのようになるかを見てみます。

最後に(私の主張、または提案としての)結論を述べます。

5.ネットで調べる

5-1.ネットで調べる(その1)

まずは軽くインターネットを使って調べてみることにしましょう。

とりあえずwikipediaへ。
曰く、

ライトノベルは、日本のサブカルチャーの中で生まれた小説の分類分けの一つ。英単語のLightとNovelを組み合わせた和製英語。略語としてはラノベ、ライノベ。稀にではあるが、軽文学や軽小説と表記される場合もある。

「軽い」というのが一つのポイントのようですね。

また、定義に関して以下のような記述もあります。

ライトノベルとその他の小説の境界は曖昧であり、そもそもはっきりとした定義を持たないことから、「ライトノベルの定義」についてさまざまな説がある。

・ライトノベルを発行しているレーベルから出ている
・ライトノベルは出版側のマーケティングにより創られた「ジャンル」であるため、出版社がその旨宣言した作品
・マンガ・萌え絵のイラストレーション、挿絵を多用し、登場人物のキャラクターイメージや世界観設定を予め固定化している。
・キャラクターを中心として作られている
・青少年(あるいは中高生)を読者層に想定して執筆されている

など、様々な定義が作られたが、いずれも一長一短があり、循環的な定義もあるので、どの定義も結論とはなっていない。

明確な定義を得たいという観点からすれば、「レーベル」による区別や「出版社がその旨宣言した作品」という基準は非常に明確と言えます。

しかしながら、

『このライトノベルがすごい』の作品一覧(インデックス)では、1970年代以降のSFを含む広義のファンタジー全般がライトノベルに含められており、ライトノベルレーベルで執筆した経験が皆無なベテラン作家もライトノベル作家ということになっている。

という記述からすると、レーベルによる区別ではライトノベルをライトノベルではないと判断してしまい、定義としては不満です。
(『このライトノベルがすごい』と言ってるくらいなので、ここで挙げられたものはラノベと認識されていると仮定して)

wikipediaの記述としては、

現状では「ライトノベル系レーベルから発売されている、アニメや漫画調のイラストを利用している作品群」ということで、完全ではないにしろおおむね区別できる。

というのが結論のようです。

以下のような研究結果も見つかります。

前者では、「キャラクターを中心として作られている」ことがライトノベルの定義だと述べています。
また、キャラクターというものを大塚英志さんの言葉を借りて、作者や現実とは乖離したような(「私」と言ってもそれは作者を反映した「私」ではない)存在と考えているようです。

上記を読んだ感想として、ライトノベルの本質的要素を取り出すという点では良さそうに思えました。ただ、定義するという視点からは、これだけで他の小説と区別できるのか不安なところもあります。

たとえば、

貴志祐介
『新世界より』

この『新世界より』はラノベ扱いではありませんが、アニメの影響かもしれませんが、少なくとも個人的に「キャラクター中心に作られている」ようにも思えてしまいます。

後者に関しては、定義について明確には述べていないようですが、URLを辿ったら

というページで

現状では、ライトノベルを出版しているレーベルから発売されている、ということで、ある程度区別できる。

なる記述が見られます。
(他にも既存で見られる定義を挙げておられますが、ここでの記述からすると、レーベルによる区別を概ね支持しているように見えます)

これは上でも述べたように、レーベルによる判断だけでは不満が残ります。

5-3.Twitterにある意見

ライトノベルは定義不全なのではなく、境界的な事例の扱いに議論があるだけなのだと思う。

ラノベ定義論では、「出版社がラノベとして売り出しているもの」とか、「読者がラノベとして認識しているもの」とか、そういう話はよく出てくるけど、「作者がラノベとして書いているもの」っていうのがあんまり出てこない気がする。面白い。

ラノベの定義問題は、「ライトノベルとはなにか」というところから始まるのが悪いんじゃないかな。たまには「ライトノベルではないものはなにか」という導入から始まってもいいと思う

ライトノベルの定義について昨夜お話が盛り上がっていたらしいので俺からも一定義。ライトノベルは小説的文脈の中にマンガ、アニメーション、ゲームの文脈を取り込んだ小説。今一般文芸がライトノベルによって来ていると言われるがしょうがない。この3つに影響を受けていない書き手なんか今いないから

「ライトノベルの特徴」みたいな文章を見ると、ライトノベルの定義には「若い男性読者に向けた」の項目が入ってそう。それは寂しいと女性読者の私は思う。

『ライトノベルは「読みやすい&面白い」プラス「十代の読者をメインターゲットにする」という基本条件をクリアすれば、題材は自由』を定義にすると、「読みやすい&面白い」のハードルが高いため、世に出ているラノベと呼ばれるものの大半は実はラノベではない真理に行き着くことになってしまう。

twitter.com/isaji/status/3… 逆では。講談社ノベルスだからラノベじゃないとか>「ラノベレーベルから出てたらラノベ」という定義の危険なところは、ライトノベルを含むがライトノベルとしては見られない作品も多く出しているレーベルが、全てライトノベルと定義されてしまう

昨晩友人と「ラノベの定義ってなに?」という話題が出たのだけど、いま見ていたニコ動の番組で岡田斗司夫さんが「ラノベの定義はすごく難しくなってるけど、表紙がなきゃ売れないものがラノベってことでいいんじゃない」と言っていて、それはそれでなるほどなーと思ってしまった。

ラノベ研究者A「やった!ラノベの定義をついに証明したぞ!」 B「嘘をつけ!」 C「そうだ、私が読んでいるものこそがラノベだ」 D「違うな、僕が持っているものがラノベだ」 E「ふざけろ!俺が売っているものがラノベだ!」 ABCDE「「「「「俺が、俺たちが、ライトノベルだ!」」」」」

【ラノベ定義談話】 A「アニメ調の表紙だったらラノベだよ」 B「黙れニワカ。アニメ調じゃないラノベもあるだろ」 C「だからレーベルでいいじゃん」 D「それだとあのアニメ作品とかどうすんだよ」 一般人「もうすべてラノベでいいんじゃない?」 ABCD「誰だ、お前」ドカドカ、ゲシゲシ!

返信 リツイート いいね

『ライトノベル定義論』を「おまえがラノベだと思うものがラノベ」で終わりにしてしまうのはつまらない、というのは分かる。なので個人的な指針としては「レーベルでラノベか否か」を判断するのが楽かな。ラノベを謳うレーベルから出版された本はラノベ。ば、化物語はラノベじゃないから…(震え声)

TLでラノベの定義で盛り上がっている。とりあえず「イラストがあるのがラノベだ」説のときに、僕のデビュー作を例外として出すのはそろそろやめて欲しいぜ。

はがないが一般小説で、空中ブランコがラノベになる弊害 @araki_shin: ラノベの定義? んなもん。「映像化」したときに「アニメ」になるものがラノベで、「実写」になるものは一般小説、って分けとけば、それだけでいいんでないの?

TBSラジオ「たまむすび」。ライトノベルの事を「挿し絵がアニメ風の小説。若年層向け。明確な定義は無い」と解説。

ライトノベルの定義について迷走してる方多いけど、広義には若者やライト層向けのエンタテイメント特化作品ってことでいいんじゃないかと。要は『読み手の食い付きの良さ』だと思うんだよね…。前も同じようなこと言ったと思うけど。

6.辞書・辞典の記述を調べる

言葉の定義を調べる上での定石として、いくつかの辞書・辞典における記載のされ方を調べてみたのてご紹介します。

一応出版社ごとに分けておきます。

6-1.各辞書の記述

小学館

ライト-ノベル《和 light + novel》
10代から20代の読者を想定した、娯楽性の高い小説。会話文を多用するなどして、気軽に読める内容のものが多い。ラノベ。

(小学館 『大辞泉』 第二版)

三省堂

ライト〔light〕
1.軽いこと。
2.手軽なこと。あっさりしたようす。
-ノベル(名)
アニメふうのイラストや会話を多用した、若者向けの、気軽に読める小説。ラノベ。

(『大きな活字の 三省堂国語辞典』 第七版 2色刷)

ライト-ノベル [日 < light + novel] 10代の若者を主な読者層に想定した気軽に読める小説の総称.会話の多用やアニメ-タッチの挿絵などが特徴.〈現〉

(三省堂 『大きな活字の コンサイス カタカタ語辞典』 第4版)

Gakken

ライト・ノベル [light novel 和] 軽めで読みやすい文体で書かれた若者向け小説の一種.アニメやマンガ調のイラストを多用する. *ラノベとも.

(Gakken 『大きな字の カタカナ新語辞典』 第3版)

自由国民社

ライトノベル【light novel】
青少年向けの娯楽性が強い小説。SF、ファンタジー、ミステリーなどが多い。電撃文庫(メディアワークス)、富士見ファンタジア文庫(富士見書房)、角川スニーカー文庫(角川書店)、講談社ノベルスなど。略してラノベ。

(自由国民社 『現代用語の基礎知識 カタカタ外来語略語辞典』 第5版)

ライトノベル (light novel)
主に青少年を読者対象にしたエンターテインメント小説。文庫で刊行、コミック風の挿絵ページが挟まれる。しびしばTVアニメ、ゲームなどと連動したコンテンツとなっている。略称ラノベ。

(自由国民社 『現代用語の基礎知識 カタカナ語 略語版』 第2版)

新星出版社

ライトノベル [light novel 和] 青少年向けのエンターテインメント小説。カバーや挿絵にアニメや漫画タッチのイラストを用いるものが多い。

(新星出版社 改定三版 『カタカナ語 新辞典 付・欧文略語』)

6-2.辞書・辞典から判ったこと

上に挙げた多くの辞書・辞典で、

略して「ラノベ」

ということは言いたいらしい。

という冗談はおいておいて、ライトノベルを特徴付ける要素が以下のようなものであると推察されます。

1.小説の一種
2.気軽に読める
3.若年層向け
4.娯楽性が高い

注意したいのは、この抽象的な要素を抽出する段階において、「会話の多用」や「アニメ・マンガ的なイラストの多用」は必ずしも要するわけでは無さそうという点です。

少なくとも辞書の記述をざっと見た感じでは、あくまで「会話の多用」や「アニメ・マンガ的なイラストの多用」というのは、上に挙げた要素の2~4を実現するための手段の一つと考えるのが妥当ではないでしょうか。

また、若年層の定義は「10代~20代」が良さそうですね。

6-3.辞書・辞典から抽出した要素の考察

要件として必須であると思われるのは、言葉の語源
light + novel
というところから、
・小説であること
・気軽に読めること
は必須でしょう。

また、
・若年層向けであること
も一般的な言葉の使われ方と、今回調べたどの辞書・辞典でも書かれていることからも必須であると思われます。

次に、
・娯楽性の高さに
関してはどうでしょうか。これはwikipediaの大衆小説のページにある記述が参考になりそうです。

大衆小説(たいしゅうしょうせつ)、大衆文学(-ぶんがく)は、純文学に対して「芸術性」よりも「娯楽性」に重きを置いている小説を総称する、日本文学における用語。「娯楽小説」「娯楽文学」も同義語。「通俗小説」「通俗文学」とも呼ばれた。

ここで注目したいのは、「娯楽性」の対義語的な意味で「芸術性」という言葉を用いている点です。この記述を信じると、日本文学の世界では、「娯楽性」をこのように捉えているようです。

すると、娯楽性の高さを判断する指針が少しだけ明確化されました。
娯楽と芸術が共存することはあるのでしょうが、少なくとも「芸術性」を意図して作られた作品は、同時に「娯楽性」を意図されていなければ、「娯楽性が高い」とは言えないことが判りました。

また、上記の引用において「通俗」というキーワードも理解の助けになりそうです。どうやら、「娯楽性」が高い小説は「通俗」と言い換えても良さそうです。
では、「通俗」とはどんなものでしょうか。goo辞書さんに頼ってみますと、

つう‐ぞく【通俗】

[名・形動]
1 世間一般の人々にわかりやすく親しみやすいこと。一般向きであること。また、そのさま。「―な言葉で話す」「―に堕する」「―文学」
2 世間なみ。世間一般。
3 世間の一般的風習。一般の風俗。世俗。「万国の―」

とあります。
「世間一般の人々にわかりやすく親しみやすい」というのが、「通俗小説」もしくは「通俗文学」と呼ぶときの意味でしょう。

つまり、「通俗」的な作品というのは、「理解されやすさ」の度合いが高い作品であると考えられそうです。または、「理解されること」を意図している、「理解されること」に重きをおいている。

というわけで、「娯楽性の高さ」は「理解されやすさ」がひとつの基準になるようです。

6-4.このへんで、必要そうな単語を広辞苑で調べてみる

この節での引用は全て
岩波書店『広辞苑』第五版
からです。

ていーぎ【定義】
概念の内容を限定すること。すなわち、ある概念の内包を構成する本質的属性を明らかにし他の概念から区別すること。その概念の属する最も近い類を挙げ、さらに種差を挙げて同類の他の概念から区別して命題化すること。
(ここでの【命題】は、「②真偽を判定することのできる文。また、その内容。」です)

しょうーせつ【小説】(ここでは②が適切なのでこちらだけ引用しておきます)
②(坪内逍遥による novel の訳語)文学の一形式。作者の想像力によって構想し、または事実を脚色する叙事文学。韻文形式だけでなく、語り手が物語るという形式からも自由となった、市民社会で成立した文学形式。古代における伝説・叙事詩、中世における物語などの系譜を受けつぎ、近代になって発達、時代に代わって文学の王座を占めるに至った。

きーがる【気軽】
物事を深刻に考えず、もったいぶらないこと。こだわりなく事をするさま。

ごーらく【娯楽】
人の心をたのしませ、なぐさめるもの。また、楽しむこと。

つうーそく【通俗】
①一般向きであること。誰にも分かりやすいこと。②高尚でないこと。興味本位であること。③世間一般のならわし。

こうーしょう【高尚】
学問・言行などの程度が高く、上品なこと。

6-5.続 辞書・辞典から抽出した要素の考察

先ほどの考察では、娯楽性はライトノベルの必須要件であるかという点に関して議論を終えていませんでした。ここではもう少し考えてみましょう。

ここまでの議論から、
・文学における「娯楽性」は「通俗性(≒理解しやすい or 興味本位)」を持つ
・「娯楽」とは「たのしませること」
であるようです。

では、「気軽」と「若年層向け」が必須であるという立場で、疑問を挙げてみます。
・気軽に読める若年層向けの小説の内、娯楽性の有無でライトノベルか否かを区別できるか?
または、
a.気軽に読める若年層向けの小説であって、娯楽性の低いライトノベルはあるか?
b.気軽に読める若年層向けの小説であって、娯楽性の高いライトノベルではないものはあるか?

全部読むことがほぼ不可能なので、なかなか検証するには至らないのでここから私見ですが、
a→根拠を明示することができませんが、考え難そうに思えます。
b→気軽に読める若年層向けで娯楽性の高い小説はライトノベルと呼ばれることになりそう。

この私見が正しければ、気軽に読める若年層向け小説があれば、その娯楽性の高さによってライトノベルか否かを区別できることになります。

しかし、そもそも若年層(特に10代~20代)向けの娯楽性の低い小説がなかなか見当たりませんね。児童文学だと少し対処年齢が低いです。そうすると、「10代~20代向けの小説」と言ってしまった時点で「娯楽性」が自動的に含まれ、「娯楽性」という判断基準が不要に思えます。
この「10代~20代向けの娯楽性の低い小説」の有無で、「娯楽性の高さ」の要不要が変わります。

「10代~20代向けの娯楽性の低い小説」が
・ある→「娯楽性の高さ」は判断基準に必要
・ない→「娯楽性の高さ」は判断基準に不要
だというのがここでの主張です。

6-6.やりたいことの確認

広辞苑による「定義」の定義に則って、ライトノベルを定義すること。
つまり、ライトノベルを、他の類似物から区別すること。

ただし、ライトノベルが小説の一種であることは前提として、小説はすでに定義されているとして出発する。

6-7.要件を全て“は”満たさない小説ではどうか?

例1:気軽に読めるがライトノベルでは無さそうな小説

芥川龍之介
『羅生門』

短いページ数という意味では気軽に読めますが、これをライトノベルと言う人はなかなか居ないのではないでしょうか。(初めから純文学のつもりで読めばページ数で気軽さは決まらないでしょうが、何も知らない人が深刻に考えず読み始める動機としては、短いページ数は「気軽」であるように思えます)

また、若年層向けというわけでも、娯楽性がそこまで高いという印象はあまり受けないように思います。

例2:娯楽性が高く気軽に読めるがライトノベルでは無さそうな小説

野村胡堂
『銭形平次 捕物控』

大衆文学に分類されるであろう銭形平次。
大衆文学ということで、娯楽性は高いと言って良いでしょう。また、気軽にも読めるかと思います。
しかしながら、若年向けはありませんね。

これもライトノベルと言う人は居ないかと思います。

7.定義への考察

7-1.結局どう定義するのが良いか

「娯楽性」という基準が必要かは微妙な気はしますが、一応入れることにすると、やはり辞書に即して
・気軽
・若年層向け
・高い娯楽性
を備えたものと定義するのが妥当そうに思えます。

構造として、

ーーーーーー小説ーーー気軽ーー→短編
|     |         |
気軽   娯楽性        |
|     |         |
ーーーーーーー         |
↓             |
大衆小説           |
|             |
|             |
若年向け          若年向け
|             |
|             |
---------------

年齢層によって
・ライトノベル
・ヤングアダルト
に分かれる

といった感じではないでしょうか。

7-2.問題点

気軽、娯楽性、若年層向けという言葉じたい抽象的であって、たとえば「ではこれが若年層向けか否か」と言われても、作者に訊いてみないと判りません。

その意味で、結局出版社がライトノベルと言ったもの、というのが一番手っ取り早くはありますね…。実質的にはそんな感じですし。

ただ、たとえば何も知識の無い1万年後くらいの未来人に説明するとき、「出版社が言った」というよりは、作品それ自体から判断できないと不便です。

7-3.気軽さ、娯楽性、若年層向け

上に述べた理由から、これらの言葉の基準を設ける必要があります。
ここでは、試みとして以下のように基準を作ってやることにしましょう。

気軽:以下の条件のどれかが満たされることとする。
・10ページ程度に収まる短さの短編である。
・隠喩などの難解な表現が少ない。
・会話やアニメもしくは漫画タッチのイラストが多用されている。

娯楽性が高い:以下の条件のどれかが満たされていることとする。
・大衆小説である。
・会話やアニメもしくは漫画タッチのイラストが多用されている。

若年層向け:以下の条件のどれかが満たされることとする。
・主人公が若年層。
・会話やアニメもしくは漫画タッチのイラストが多用されている。

ここでも言っておきたいのは、「会話やアニメもしくは漫画タッチのイラストが多用されている」ものはライトノベルになり得ると思いますが、「会話やアニメもしくは漫画タッチのイラストが多用されていない」ものでもライトノベルの可能性があるということです。あくまで気軽さ、娯楽性の高さ、若年層向けにするための手段として「会話やアニメもしくは漫画タッチのイラストが多用されている」と考えるべき、というのが主張です。

7-4.例題

Q1:青い鳥文庫はライトノベルか?

上に挙げた主張からすると、少なくとも児童文学という点で年齢層の違いからライトノベルではないと判断しますが、実際に青い鳥文庫の小説はライトノベルと呼ばれることは無いように思います。

Q2:漫画家である小畑健が表紙のイラストを描いた太宰治の「人間失格」はライトノベルか?

イラストのみで判断しようとするとラノベになってしまいそうですが、内容が純文学(=娯楽に重きをおいていない)のでラノベじゃないと判断しますが、まぁラノベ扱いは普通されませんね。

Q3:冲方 丁の「マルドゥック・スクランブル」はライトノベルか?

これはかなり微妙なラインだと思います。

大衆小説であって主人公が若年層であるので、ここでの定義によれば、「娯楽性」と「若年層向け」を満たしています。

「気軽さ」については、難解な隠喩というのも少ないので満たしていそうです。また、イラストは多くありませんが、会話は多用されているとも見られそうです。(この基準は人による?)

したがって、今回設定した基準によれば、これはライトノベルに分類されます。
ただ、実際の認識としては、この作品はライトノベルではない普通のSF小説と位置づけられている気がします。

8.結論(定義の提案)

ライトノベルの定義:気軽で娯楽性が高い若年層向けの小説。

ただし、ここでは次のような定義で、上記の術語を使っているものとする。

気軽:以下の条件のどれかが満たされることとする。
・10ページ程度に収まる短さの短編である。
・隠喩などの難解な表現が少ない。
・会話やアニメもしくは漫画タッチのイラストが多用されている。

娯楽性が高い:以下の条件のどれかが満たされていることとする。
・大衆小説である。
・会話やアニメもしくは漫画タッチのイラストが多用されている。

若年層向け:以下の条件のどれかが満たされることとする。
・主人公が若年層。
・会話やアニメもしくは漫画タッチのイラストが多用されている。



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